2012-01-01から1年間の記事一覧

空気を買う時代

僕はオーガニックを賛美したりヒッピーの振りをするような人間はないし、ハイテクや新しいものが大好きな人間ですが、それでも僕達はあまりにも自然から遠くに来すぎてしまったのではないかと思うことがあります。 それは野生の動物達と今の僕達を比較してみ…

ずっとわからないこと

何度か似たようなことを書いていて、でも本質は上手に書けていなくて、最近またそのことを強く感じていて、でも今回も上手く書けるかどうか分からない、あることを書きます。 それは僕が結構長い間抱えている疑問です。 「みんな、どれくらい本当にそう思っ…

出征した犬達

「殺してやろうと思って」と、温厚そうな青年が淡々と言うので、テーブルは一瞬間の静寂に包まれた。彼が殺そうと思ったのは野良猫だ。ある席でのことで、彼とはほとんど全員が初対面だった。「いやね、猫が来てね、庭に、ウンチするんですよ、それが臭くて…

犬が不幸だとしたら

糸井重里( @itoi_shigesato )さんのツイートで、『犬と猫と人間と』( http://www.inunekoningen.com/ )という映画を知りました。映画自体は2009年に公開されたもので、主に日本で殺処分される犬や猫のことを扱っているようです。この映画はある一人の…

孤独な現代の若者という幻想

しばらく前に「土間の家(http://d.hatena.ne.jp/doma_house/)」で、座談会「北京と京都の大学生が見た町家」( http://d.hatena.ne.jp/doma_house/20120821/1345542150 )が行われました。 北京と京都における、古い家の空き家問題や使用例についての話だっ…

イメージとしてのアメリカ、オタク文化と敗戦

なにを隠そう、僕はアメリカ文化育ちです。 アメリカの映画とアメリカのテレビドラマとアメリカの小説を、子供の頃たくさん消費しました。 実になんというか、クールじゃないですね。 これはつまり、ハリウッドのドンパチボカーン映画と西海岸の高校生ロック…

動物園はいらない

この春、京都市、梅小路公園に水族館がオープンしました! 僕はまだ行ったことがないのですが、イルカやアザラシがかわいそうなのでさっさと潰れてしまえばいいのになと思っています。どうして海に住む知能の高い哺乳動物を内陸部のビルに監禁して見世物にし…

書評『「ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体」』適菜収:その時代は既に来た

先日、ある女の子に「あそこのチョコレート屋が最近雑誌に良く出てて行列もできているから私も食べてみたい!!!」と言われて、「それはB層グルメですね」と返答したあと、B層という言葉の定義を教えてあげて雰囲気を悪くしてしまいました。 B層というのは…

911

昨日の夜、大宮通を自転車で走っていると、タコ焼き屋の店頭でタコ焼きを買っている友人にばったり会った。彼は、僕も知っているみたいなのだけど、どうにも誰かだ思い出せないアメリカ人と待ち合わせていて、結局そのアメリカ人は来なくて、色々と二人で話…

実は春からこちら、自分で独占して使うことのできる机がありませんでした。約半年間です。それがこんなに辛いとは思わなかった。独占できる机がなくても、なんとか上手くやれるのではないか、と思っていたのは間違いで、先週はもう限界だった。昨夜、暫定的…

花火

残念なことに湖面は全く見えなかったが、それでも空へ勢い良く広がった花火は圧倒的な美しさで迫り、左から右までパノラマに、連発された高輝度の造形と、少しく遅れて胸腔へ響く爆発音が、四角く囲まれた日常にそこだけ穴を開けている。 空を見上げて、救わ…

天橋立/大江山/酒天童子/元伊勢

半島の様に突き出した低い山が、微かに曇った空の前で緩やかなスロープを作っている。何一つ転げ落とすつもりのない平和な斜面には、幾分古くなってきたリゾート旅館がすくりと立っていて、側でゆっくりと回転する小さな観覧車と麓の間を、これもまったく目…

書評『希望難民ご一行様』古市憲寿:の大澤真幸レビューのレビュー

しばらく前、大澤真幸による『希望難民ご一行様−ピースボートと「承認の共同体」幻想』([著]古市憲寿、本田由紀)のレビュー(http://book.asahi.com/ebook/master/2012030600001.html )を読んだ。 その後、僕はレビュー後半に書かれていた「目的性と共同…

日蝕

2012年5月21日の金環日食を見るつもりはなかった。僕は科学が好きだと公言して生きてきた割に、天体ショーにはあまり興味が無い。数カ月前にも心改めて月食を見てみたけれど、ふーん、としか思わなかった。ただ、ある星の前を別の星が横切っているだ…

color tv

あるテレビについての話をしようと思う。あるいは彼女が僕の部屋から盗んでいったカラーテレビ、についての話ということもできるかもしれない。実は僕はそのカラーテレビを今も探している。もうそんなテレビは役に立たない、という人もいる。それは古いブラ…

書評『風邪の効用』野口晴哉:野口晴哉という巨人

夏、が呼ぶのかもしれない。 彼はまあ、控え目に言っても随分と怪しい男だ。 彼というのは野口晴哉のことで、この一風変わった人のことは、昔本を読んだきり、去年の夏まで完全に忘れていた。去年の夏、友人の個展で受付をしていると、足を痛めた様子の年配…

新しい生活。

坪庭の上に設けた、手すりも柵もない開放的な通路に腰掛け、背後の土壁にもたれた僕達は、その庭向こうで談笑する友人達の様子を眺めていた。古く古く薄暗い日本家屋の二階に、彼らの部屋から笑い声と白熱電灯の光が届く。光景は古い梁と引き戸をフレームと…

FBI

「FBI!」と男は叫んで、小走りに、何か手帳のようなものを掲げた。レストランの店員は戸惑ってカクンと一つお辞儀をして、男を走るに任せた。そんなわけがないと思い、僕は男の足を引っ掛けて転ばしてやった。男は素早く立ち上がると「オレはFBIだぞ、何を…

宇宙人にさらわれた記憶を消された私はさらわれることを恐れる必要があったのか?

僕が最初に「記憶」を「結構なんだか謎なものだ」と思うようになったのがいつからかは、結構はっきりしています。 小学生の時に、テレビでUFOの特番を見た時からです。 ええ「矢追純一スペシャル」とか「緊急特番!エリア55で宇宙人の解剖が行われていた!…

書評『転校生とブラックジャック』:私があの人ではなく私であるという不可思議

今まで2冊しか本を読んだことがないのですが、それでも一番好きな哲学者だと断言している永井均さんの本を久々に読んでいます。「転校生とブラック・ジャック」という本で、副題が「独在性をめぐるセミナー」と書かれている通り、先生と生徒たちが語り合う…

書評『暇と退屈の倫理学』國分功一郎:環世界を誤解していたこと

「暇と退屈の倫理学」という國分功一郎さんの本を、去年の暮れに友達が貸してくれて、面白く読みました。 その本の途中に「環世界」の話が出てきます。 文脈としては、ハイデッカーの退屈論は「人間は環世界を持たない(閉じ込められていない)」ことに依存…

書評『毎月新聞』佐藤雅彦:ことわざが嫌いなんです

漢字の成り立ちを説明し、そして何か人生訓のようなことを唱える人がいますが、僕にはまったく意味が分かりません。「人」という字は二本の棒が支え合うことでできている、人というのは支え合って生きていくのだ、みたいなやつです。 そもそも、人という漢字…

書評『フレデリック―ちょっとかわったねずみのはなし』:あるいは芸術について

(あるいは芸術に絶望した芸術家のために) 僕はもう32歳だし、それに男だし、世の多くの成人男性がそうであるように「ぬいぐるみ」には特に興味がありません。小さい時にはいつも持ち歩いていたぬいぐるみもありました。今でも見掛けて「かわいいな」とか…

円と長方形(円面積の直感的証明)

昨日、ツイッターで「円の面積を求める公式を忘れた」という感じの記述を見かけました。そして、なんともお恥ずかしいことに、はじめて「どうして円の面積はπr^2(円周率×半径rの二乗。「^」という記号で何乗を表しています。)で求まるのだろう?」と疑問…

やる気という企業化社会の信仰

前回のブログが、酔っ払って随分と違うものになってしまったので、今回はもともと書くつもりだったことを書きます。 随分穿ったことなので、こちらもどうせ変かもしれません。 もともと書こうと思っていたのは、「やる気」というものが、僕達のネイチャーか…

書評『暇と退屈の倫理学』國分功一郎:単独で完結する歓喜としての進化

1811年から17年に掛けて、イギリスでラッダイト運動というものがあったらしい。 機械に職を奪われることを恐れた労働者達が、機械を破壊するというものだ。テクノロジーの普及が職を奪うというのは現代でも良く聞かれる話だが、こんな運動が200年も…

限りなく装われた無知

年が明けた。2011年が終わり、2012年が始まった。それでも全く新年を迎えた気持ちにならないのは、僕のごくごく個人的な理由故なのか、30日に餅つきをして雑煮を食べてしまったせいなのか。あるいは、2011年が特別に破壊的な1年だった所為だ…