one.

 こんなに奇妙なお盆は初めてのことだった。
 激しいノックの音で目を覚まし、ドアを開けると2人の友人が廊下に立っていた。女の子は泣くじゃくり、男は真剣な表情で僕の助けが必要だと言った。そして2人とも裸足だった。
 朝6時15分。僕の8月16日はこうして始まった。

 残念ながら事件の詳細はここには書けない。僕はそれから1日を全力で過ごした。午前中はほとんど警察や警備との間に入って通訳をしたり、できる捜査はした。警官は予想通り全く非協力的で何の役にも立たなかった。僕自身、現場の保存について感情的になって失敗した点があるけれど、それに関しても警官は一緒にいたわけだから助言してくれれば良かったと思う。彼らはただやってきてうろうろして、僕達が必死になっているのを見ているだけだった。何かを頼むと令状がないと我々はなんにもできないから、それに変に国際問題とかになっても困るし、というようなことを言うだけだった。それどころかどちらかというと被疑者の肩を持って、もう証拠もないし終わりにしようと僕を説得しようとした。警官はただそこにいて、被害者の泣きじゃくっている女の子とその友人である男、僕が捜査めいたことをするというわけの分からないことになっていた。

 男は前から決まっていたように今日が帰国の日で、1段落したあと、シャトルに乗る彼を見送った。奔放で気丈な男がシャトルの中で顔を覆うのを見て僕達は強い悲しみに包まれた。昨日は別の仲間を送り出したところだった。まだコートを着ていた寒い春先、偶発的に集まり出かけた8人はチームだった。ワインを飲みながらカニ座が多いからカニチームという名前にしようと下らないことを決めて、そしてこれから素敵なことがたくさん起こるに違いないと思った。春と夏は一瞬のように通りすぎ、僕達は未来に再会することを誓いながら日に日に少ない人数で友人を見送る。
 
 夜は久々に会う人々や初めて会う人々と2時間ばかりあって大文字を見た。
 これまで大しかみたことがなかったけれど、はじめて鳥居を除く全部を見た。
 送り火が燃え尽きると季節は夏ではなく夏の終わりに変わる。生きる者も死んだ者もどこかへ帰っていき、僕達はまたみんなで会うことができるのだろうかと思う。