刺青とヘルメット
僕にはずっと刺青を入れたいと思っていた時期があった。単純にそれがかっこいいなと思ったからだ。気に入った服を買ったりするのと同じように。
結局は、何を入れても飽きるだろうし、一生物の模様は選ぶことができなかった。
昔お世話になったKさんという人は、腕や上半身にものすごい刺青の入った人だった。半袖から覗く刺青の腕と長髪と髭とサングラス、さらに初めて会ったときは一言も言葉を交わさなかったので、2回目に会うとき僕は少し厄介だなと思っていた。
予想に反して2回目からは僕たちはたくさん話をして結構仲良くなった。
ある日、僕が「僕もタトゥー入れたいなと思うことがあるけれど、でも飽きそうだから、Kさんその入れ墨飽きないですか?」と聞くと、彼はこう答えた。
「飽きるかもしれないんだったら入れない方がいいんじゃないの。俺のこれは飽きるとか飽きないとかじゃなくて母親だから」
少し話は変わるけれど、しばらく前に父親が会社の若い同僚と自転車のレースみたいなものに出場していた。一人が自転車用のヘルメットではなく、工事現場で使うようなヘルメットを持ってきたので、それを冗談だと思って父は彼をからかっていたらしい。
あとで、彼がデジカメの写真をまとめて作ってくれたDVDには「父親の形見のヘルメットで参戦」とキャプションが入っていたということだ。
世界には一見するだけでは分からない沢山の物語がある。
結局は、何を入れても飽きるだろうし、一生物の模様は選ぶことができなかった。
昔お世話になったKさんという人は、腕や上半身にものすごい刺青の入った人だった。半袖から覗く刺青の腕と長髪と髭とサングラス、さらに初めて会ったときは一言も言葉を交わさなかったので、2回目に会うとき僕は少し厄介だなと思っていた。
予想に反して2回目からは僕たちはたくさん話をして結構仲良くなった。
ある日、僕が「僕もタトゥー入れたいなと思うことがあるけれど、でも飽きそうだから、Kさんその入れ墨飽きないですか?」と聞くと、彼はこう答えた。
「飽きるかもしれないんだったら入れない方がいいんじゃないの。俺のこれは飽きるとか飽きないとかじゃなくて母親だから」
少し話は変わるけれど、しばらく前に父親が会社の若い同僚と自転車のレースみたいなものに出場していた。一人が自転車用のヘルメットではなく、工事現場で使うようなヘルメットを持ってきたので、それを冗談だと思って父は彼をからかっていたらしい。
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地雷を踏んだらサヨウナラ (講談社文庫) | |
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