トラベラー。

 はじめに、「中州パーティーのお知らせ」を簡単にまた書いておきます。
 詳しくは一つ前のブログに書きました。

 『中州パーティー(名前つけなきゃな)』
 2005年9月2日金曜日@鴨川公園(出町柳)19:00〜27:00 無料

 
 9月10日に滋賀でゴア・ギルのレイブがあるということを、この間の日記にも書いたけれど、今日は少しゴア・ギルのことを書きたいと思う。
 といっても僕はゴア・ギルのことをほとんど何も知らない。だから、違う話になるかもしれない。

 僕は今でこそクラブだとかイベントだとかときどきはしゃいでいますが、昔はDJという存在がどうにも解せませんでした。解せないどころか、むしろその存在を不快に思っていた。
 どうしてかというと、自分でライブをする訳でもなく、音楽を作る訳でもなく、人が必死に作り上げた、あるいは演奏した楽曲をレコードなりCDなりでかけて、それで前のDJブースで調子に乗っているのだから質の悪いことこの上ない、と僕には思えてしかたなかったのです。自分で演奏してみろよ、と言いたくなる。

 だから、ずっとクラブには行かなかった。
 そんな僕がクラブに出入りするようになったのは、だいたいが清野栄一さんの書いた「レイブトラベラー」という本の所為だと思う。

 レイブトラベラーという本を読んだのがいくつの時で、何年前なのか、僕には思い出すことはできない。その本を読むまで、僕は多分ダンスには興味がなかった。レイブ、という言葉の意味すら知らなかった。
 僕は、その本の美しい表紙の写真と、トラベラーという言葉がタイトルについていることから、その本を手に取った。

 そして、僕の人生は変わった。

 けしてオーバーな表現ではない。
 僕はこの本を読まずに所謂「クラバー」という存在になったとは思えないし、そして僕はクラブでたくさんの新しい経験をした。それまでとは全くことなった種類の友達もたくさんできた。
 冒頭で宣伝をした「中州パーティー」だって、清野さんの本を読んでからずっと頭にあったものだ。

 レイブというのは基本的には野外で行われるダンスパーティーのことです。

 レイブトラベラーの最初の方に出てくる文章を僕は忘れることができない。

「世界地図を机の上に広げて、自分が行ったことがある場所に印をつけた。ちっぽけな日本列島の伊豆と日光のあたりに印をつけた。レイブをやっているはずだがまだ行ったことがない場所に印をつけた。イギリスではじまったその印を結んだ道は、ヨーロッパ大陸を回ってインド大陸とタイを通り、日本を横切ってオーストラリアまで、地図の上を北から南へ、曲がりくねった蛇の背中のように走っていた。今まで見たどの地図にもガイドブックにも載っていない道がそこにはあった。その道の上を、今この時に、何万人もの旅行者が行き来していた。僕はその道を、もう一度歩いてみようと思った。」

 たくさんのことを僕はこの本で学ぶ。
 パンク、ロッカー、ヒッピー、モッズ、サイケデリック、ゴア、イビザ、サマー・オブ・ラブ
 音楽と、ダンスと、人間のこと。

 そして、DJというのがどういう存在なのかも、この本で学んだ。
 それはそんなにいい加減なものではなかった。

 この本の中で名前の出てくるDJの一人が、それがゴア・ギルだった。
 かつてインドのゴアがとても暑かった頃の、レイバーたちの聖地だった頃の、伝説的なDJ。
 その人が滋賀県にやってくる訳です。
 行かない訳にはいかない。

 本の後半ではスズキ・ツヨシという日本人のDJも大きく取り上げられています。
 彼は世界中でとても人気のあるトランスのDJで、僕も彼がコンパイルしたサイケデリックトランスのCDを一枚持っていますが、実は全然聞かない。
 トランスという音楽を、僕は別に好きじゃないし、むしろ嫌いだといってもいいと思う。

 でも、やっぱりゴア・ギルのパーティーには行かない訳には行かない。
 もしかしたら清野栄一さんも来るんじゃないかな、なんて思ったりもする。

 つまり、これは僕にとってはどこか特別なイベントなわけです。
 僕は今、かつて自分が通っていたところでアルバイトをしているわけですが、なんというかその手のループみたいなものが人生にはいくつかあって、これもその一つだと思う。

 ある武道を始め、その縁で知り合ったある武道かの師匠の師匠が、昔僕に多大な影響を与えた書物の著者だったことがある。
 
 色々なことが順に、思いがけず繋がって行くものなのだと、最近思わずにはいられない。