the.u.s.

 これまで一度も通して聞いたことがなかったのだけど、あまり多くの人がバラク・オバマの演説は素晴らしいという評価をしているので、youtubeで20分くらいの演説を聴いてみた。確かにドラマチックなスピーチだった。アメリカらしくショーアップされたステージで丹精な顔立ちをしたまだ若い政治家が熱弁を振るう様はまるで映画みたいだった。
 これは素晴らしい政治家が現れた、と僕がもしもアメリカ人なら思っただろう。でも、僕はアメリカ人ではなくて、心の底に小さな恐怖が沸き起こるのを感じた。僕は英語が堪能ではないので、実のところオバマさんが何を言っているのかそれほど良く分かったわけではない。でも、だいたいは「どんな主義主張、立場の人も一丸となって良いアメリカを作りましょう」ということだったと思う。良い世界ではなくて、良いアメリカ。愛国心とかいう以前にフレームワークとしてのアメリカ。僕はアメリカ人ではないので、そういう語り方をされるとなんとなく怖くなる。

 そういうことを思った後で、内田樹さんのブログを読むと僕の漠然と感じた恐怖みたいなものがもっと分かり易く書いてありました。それを引用させていただくと、

『だから、私はアメリカがこのあと外交戦略などでこれまでより「開放的」になるというふうには考えない。
アメリカ国民は自己利益を確保するために「開放的なタイプの政治家」を指導者に選んだのであり、当然彼は全力を尽くしてブッシュが失った「国益」の回収に乗り出すはずであり、有権者はそれを期待している。
オバマは95%のアメリカ国民に減税を約束した。
でも、その原資はどこから調達するのであろうか?
アメリカの富裕層からであろうか?
まさかね。
彼は白人も黒人も、貧しいものも豊かなものも、「すべてのアメリカ人」の統合を訴えたのである。
富裕層に課税するような政策はこれと平仄が合わない。
アメリカを豊かにするための原資はおそらく「アメリカ以外の国」から調達されるのであろう。
現に学術領域でしているように。
麻生首相オバマの大統領決定の報に苦虫をかみつぶしたような顔をしていた。
彼はアメリカの新大統領が「内側にいい顔」をする分だけ、「同盟国に渋い顔」をすることをおそらく予感しているのであろう。』