彼女はその日真っ白な服を着ていた。

 死体を運ぶという夢の話を聞いた。
 彼女は夢の中で大都会の真ん中の火葬場まで死体を運び、人々はみんな彼女を避けて道ができる。
 そして、僕はある知り合いのおじさんが昔話していたことを思い出す。

 「焼いてると、多かれ少なかれ動くんだよ、死体って、ときどき生きてるんじゃないかと思うくらい動くときがあって、そのときはすぐに出さなきゃいけないんじゃないかって迷うけれど、でも死んでるはずだし、出したら話がややこしくなるから出さない」

 彼は火葬を見届ける仕事をしていた。仕事というか、それは田舎の小さな街に置かれた火葬場で、持ち回りで村人が火葬の管理をしていた。
 たしかに、魚だって焼いたら形が変るし、焼けば死んでいる人だって少しは動くに違いない。

 そして、ときどきはまるで生きているかのように動く死体もある。

 僕は生き物を飼うのが好きな子供だったので、常に何かのペットを飼っていた。一度、デパートのペットショップで見付けたネズミを衝動買いした。
 寒い冬で、僕はそのネズミの箱に十分なボロ布を詰めて、暖かく眠れるようにしたつもりだった。本当はヒーターがいるのかもしれないと思ったけれど、たぶん大丈夫に違いないとそのまま僕は毛布に包まって眠った。

 次の朝、ネズミは小さく丸くなって、そして冷たくなって死んでいた。
 僕は自分が寒さ対策を怠ったことを悔やんで、それから神様か誰かに怠慢を恥じた、ネズミにも謝ったけれど、彼の耳はもう聞こえてはいない。
 裏庭に、小さな穴を掘って、そこにネズミを埋めた。僕は買った生き物を一晩で死なせてしまった。

 そして大学生になって、ハムスターや一部のネズミは冬眠するということを知った。
 冬の朝、ハムスターが冷たく硬くなっているのを見付けて、飼い主が死んだと思って埋めてしまうことがよくあるけれど、でもハムスターはそうやって冬眠するので死んだかどうかはよくよく見極める必要があるのです、とその本には書かれていた。

 僕のネズミは本当に死んでいたのだろうか。
 僕はそれを埋めた。