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西海岸旅行記2014夏(28):6月13日:ヨセミテ国立公園。岩に登る。困惑のガソリンスタンド

西海岸旅行記

 野生動物の体に悪い食べ物でランチを済ませた僕達は、売店でビーフジャーキーなどを買って再び車に乗り込んだ。
 カリー・ビレッジを出てすぐの場所に開けた場所があって、路肩に車を止めて川などを見に行く。川は僕の良く知っている日本の川とは全然違う雰囲気の清流で、子供達がボートに乗ったり泳いだりしていた。たとえば「ロード・オブ・ザ・リング」がニュージーランドで撮影されていたりと、完全に映像作品からの影響だけど、ファンタジーの世界で流れている川みたいだった。エルフなら向こう岸にいるかもしれないが、少なくとも河童は絶対にここにはいない。
 ここは1日だけちょっと見に来たのでは歯がたたない公園だと思い知る。1週間、すくなくとも4,5日は滞在しないと何も分からない。今後の旅程を全部キャンセルしてここにしばらく滞在したい気分に襲われる。自然なんて似たり寄ったりだというのは全くの間違いだ。

 とは言っても、あれこれあちこちで取った予約と約束を反故にするわけには行かない。だいたい帰りの飛行機はロサンゼルスから飛ぶし、ヨセミテでの宿泊が飛び込みで可能だとはとても思えなかった。テントサイトの予約も開始とともにすぐ埋まるらしいし、有名なアワニーホテルも予約は一杯。仮に予約可能だとしても一泊5万円以上はする高級ホテルで気軽に泊まれない。
 現実的に、僕達には1日しかない。
 1日で手軽にヨセミテを見るとなると、プランはかなり限定的になる。案内パンフレットにはいくつかのトレッキングコースも載っているのだが、これはと思うコースは所要時間が8時間とかかかるので、ちょっと気楽には踏み込めない。
 ヨセミテにはアメリカ最大の落差だという大きな滝"Yosemite Fall"があって、"Upper Yosemite Fall"と”Lower Yosemite Fall"の二段階に別れている。この低い方"Lower Yosemite Fall"へは車道から歩いて2,30分で行けるようだ。これならいかにもハンディだし、名物の滝がターゲットだしということで、僕達は"Lower Yosemite Fall"を目指すことにした。

 またしても駐車スペースがなくて、路肩に車を止めて外へ出る。炎天下に車を止めると、こんなに熱いのに良く壊れないなといつも思う。金属も膨張するだろうし、コンピュータも入っている。そして何十リットルもガソリンが入っているので、ちょっと不安になる。
 一旦木陰に避難して日焼け止めを塗っていると、通りがかった白人の一家が僕の背後をじっと見つめる。何かと思えば一匹の子鹿が何かを食べていた。もう人なんてすっかり見慣れていることだろう。車道沿いに設けられた自転車レーンでは、ヘルメットを付けた子供たちが自転車で暴れ回り、その親達があれこれと絶え間ない注意を飛ばしている。

 Lower Yosemite Fallへのコースは、たぶんバリアフリーになっていてきれいに整備されている。ちょっと拍子抜けするくらいだ。様々な人種の観光客が水のボトルを抱えて歩いている。そういえばカリフォルニア州ではペットボトルに入れた水の販売が禁止になるだとかなっただとかいう話を聞いた気がするけれど、あれはどうなったのだろうか。
 滝への道すがら、通路のそこここに立って滝を背後に写真撮影する観光客。日本では見ない青い鳥。もう結構近くに見える滝はやはり真夏の真昼の日光に照らされて流しそうめんのように白く光っている。お手軽コースだけあって、結構すぐ滝に着きそうだなと思いながらあるいていると、目の前に大岩がゴロゴロしていた。ちょっとあんまりその辺では見ないような大岩だ。やっぱりここはすごい。

 到着した滝は、やはり岩のゴロゴロした場所だった。たくさんの人々が集まっていて、水に足を漬けている人もいる。滝には「ここからは危険なので入ってはいけません」というような看板もなければ柵もないので、頑張れば限りなく滝に近づくことが可能だ。簡単なロッククライミングの要領でみんなどんどん岩をよじ登っていく。僕達もそれに倣って滝壺めがけて岩をよじ登った。
 一頻り滝の近くまで行くと、直射日光の降り注ぐ岩の上では長時間寛いでもいられないので、結構すぐに引き返すことになった。クミコはこのアクティビティによって軽い日射病みたいになってしまい、この後は車の中でエアコンを効かせて休むことになる。

 日射病もあるし、目的の滝にも行ったので、昼下がりに僕達はヨセミテを後にした。今夜の宿はフレズノーというヨセミテから1時間半くらいの街だ。どこにでもあるチェーンの大手モーテル「ベストウエスタン」を、昨日の夜マイケル・J・フォックスのモーテルから予約していた。

 ヨセミテ国立公園を出てすぐに、ガソリンスタンドが目に付き、そろそろタンクの残りも少なくなっていたので立ち寄ったのだが、どうしてか僕のカードを読まない。なんどか試してみて、やっぱり読まないので、クミコのカードを試したのだがそれでも駄目だった。「壊れてんのかな?」と別の機械にもカードを突っ込んでみたけれど、やっぱり駄目だ。ちなみにアメリカのスタンドは基本的に全部セルフ。
 ガソリンスタンドも兎に角暑いので、隣にあった食料品店に一先ず避難して飲み物とアイスクリームを買い、入り口に置いてあったベンチに座って一休みした。
 チェリーとチョコレートのアイスバーを齧っていると、ヨセミテ方面から一台の白い車がガソリンスタンドにやってくるのが見えた。

「あっ、車来た、あの車ガソリン入れれるかな」

 車から下りてきたのはアジア人というか、日本人だった。遠くからでも分かる。ドライバーは若い青年で、他に女の子が2人。青年が下りてきてやはり怪訝な顔をしている。そのうち残りの女の子も下りてきてカードをあれこれしているようだ。「それ壊れてるみたいなんですよ、僕達もさっき駄目でした」と言いに行こうかとも思ったけれど、炎天下に出て行きたくなかったのでそのまま見ていると、彼らは諦めて車に乗って行ってしまった。

「やっぱり壊れてるのかな」

「どうだろう、次の車も見てみよう」

 次にやって来た車はなんとなく地元感のあるピックアップだった。下りてきたのは白人のおじさんだ。彼はいかにも普段通りといった感じで悠々ガソリンを入れはじめた。
 うーん。
 さらに別の車がやって来て、今度は白人のおばさんがこれもまた悠々とガソリンを入れはじめた。

「えっ、どうなってんだ、人種差別か」

 という冗談はほんのちょっと本当で、人種差別ではないが、クレジットカードの発行国が障壁になっている。これは後で分かったことだけど、どうやらアメリカのスタンドの機械の一部はまず日本のクレジットカードを読めない。カードが読めてもZIPコード(郵便番号)の入力を求めてくる。郵便番号を聞いてくるのが予想外だったので、最初はカードの暗証番号を聞かれているのかと思ったけれど、どうみても郵便番号と書いてあるし実際にそうだった。もちろん日本の郵便番号は使えない。入力しようにもアメリカの郵便番号とは桁数が違うので入力できない。  
 だからスタンドの機械で日本のクレジットカードは使えない。たぶんアメリカ国内で発行されたカードしか使えない。 
 さらに機械は現金を使うようにできていないので、レジまで行って直接カードか現金で払うしかない。

 これは些細なことのようだが、かなり面倒だ。
 どう面倒なのか順を追って説明しよう。
 まず、車を止めるのは同じだ。下りてレジまで行く。レジはスタンド内のミニコンビニみたいな店のレジで一つしかない。大抵は空いているけれど、僕は今回の旅行中2回ほどレジで結構待った。
 レジでは「何番の給油マシンで、どれだけ」ガソリンを入れたいか伝えなければならない。もしもレジでカードが読めないとかなると面倒だし、多めに現金は持っていたので今回は現金で払ったのだけど、この「どれだけ」というのがちょっと面倒で、「レギュラー満タンで!」とか言うわけにはいかない。「40ドル分」みたいな感じで量を指定しなくてはならない。満タンにしたいときは、これくらいで満タンかなという量より多めに言う。40ドル分くらいで満タンかな、というときは50ドルと言って、そして一旦50ドル払う。
 レジでお金を払うと、機械からガソリンが出る状態になるので、機械のところへ戻ってガソリンを入れる。こんな原始的な支払い方法を撮っているにも関わらず、もちろん機械には自動ストップのセンサーが付いているので満タンになると給油は自動で止まる。
 給油が終わるとレジに戻って、たとえば入ったのが45ドル分だったとすると、さっき50ドル払っているので5ドルのお釣りをもらう。
 なんかバカみたいだけど、これがリアルだった。先払いにしないと逃げる輩がいるとか、理由が分からなくもないけれど、かなり面倒には違いない。

 この食料品店はガソリンスタンドとは関係がないみたいで、さらにスタンドに併設された本来はレジが有りそうな小屋がガランドウなので、僕達もさっきの日本人と同じようにここのスタンドは諦めた。しばらく行ったマリポサという街のTexacoで給油をすると、ここでは問題なく僕のカードが使えたのだが、問題なくガソリンスタンドの機械でカードが使えたのはここだけだった。

アメリカ 国立公園 絶景・大自然の旅 (私のとっておき)
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