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書評:『あなたを天才にするスマートノート』岡田斗司夫

あなたを天才にするスマートノート
岡田斗司夫
文藝春秋

 前回、岡田斗司夫さんの『評価経済社会』という本を紹介しました。とても見通し良くすっきりと書かれた本だったので、頭の中がまとまった賢い人なのだろうな、という印象を受け、三部作として紹介されていた残りの2冊も読んでみることにしました。
 ただ、残る2冊はタイトルが結構厳しくて、『あなたを天才にするスマートノート』と『人生の法則 「欲求の4タイプ」で分かるあなたと他人』というものです。かなり胡散臭いですね。ビジネス本とスピリチュアル本みたいですね。

 通常であればタイトルを見ただけで手を出すことはなさそうな本ですが、著者が岡田さんなので読んでみました。
 岡田斗司夫という名前を僕がはじめて見たのは十数年前、高校生の頃です。当時『トンデモ本の世界』という「と学会」が出した本が売れていて、岡田さんはその「と学会」の会員でした。『トンデモ本の世界』という本は、世に出回っている”トンデモ本”をウォッチして楽しむというスタイルの意地悪な本です。たとえばUFOについて真剣に書かれた本を取り上げて「ここにこう書いてあるけれど、全然辻褄合ってないですね。著者の人どういうつもりなんでしょうね、バカですね、プッw」というような。
 この本は意地悪だけどとても面白くて、僕は色々な影響を受けました。僕の物事を批判的に見てしまう性向の一部はこの本に起因していると思います。

 少し話はずれますが、数年前、僕は町山智浩さんという映画評論家の存在を知って、彼の評論を好むようになりました。不幸なことに、僕は「映画が大好きだ!」という程には映画が好きではないので、あまり映画を見ないのですが、町山さんの映画評論は評論だけで既に映画よりも面白いです。「この人は本当に映画が好きなのだ」ということがヒシヒシと伝わってきます。悪口ばっかり言ってらっしゃいますけれどw。(参考:町山智浩の映画塾
 しばらくして、町山智浩さんが『トンデモ本の世界』の仕掛け人だったということを知り、また昔読んでいた別冊宝島のいくつかも町山さんの手によるものだったということを知りました。加えて町山さんはもともと、みうらじゅんさんの担当者で、みうらさんからは「バカの町山」と呼ばれています。というか「町山智浩」と書いて「バカ」と読むことになっているそうです。僕は知らぬ間に長期に渡って町山智浩という人の影響を受けて来たことになります。

 閑話休題
 岡田さんは、ガイナックスを作った人で、オタキングで、最近ではレコーディングダイエットの人で、そういうこともなんとなく知っていました。『評価経済社会』がはじめて読んだ岡田さんの著作だったので、詳しいことは何も知らないですが、その漠然としたイメージからも、『評価経済社会』の内容からしても、『あなたを天才にするスマートノート』と『人生の法則 「欲求の4タイプ」で分かるあなたと他人』の2冊が、よもや単なるビジネス本やスピリチュアル本ではないだろうという予想はできます。

 結果的に『人生の法則』の方はパラパラと見るだけで”読む”には至りませんでした。僕には興味の持てそうにない内容でした。

 『スマートノート』の方は、なんだかんだ言って所謂「ノート術」の本だったのですが、技術的なことは置いておいて面白かったです。
 ノート術の本を読んで、ノート術とは関係のない何が面白かったのかというと、著者のスタンスです。

 岡田さんは子供の頃頭が良くて、だから悠々と遊んでいました。当然ノートを取るとかメモを取るみたいな泥臭いことはしなかった。ところが大人になるに従って、自分の到底敵わない人達と出会うようになり、彼らに太刀打ちする「メモを取る」ようなります。するとメモには強烈な力があることが分かり、やがてそれはノート術へと発展します。この本は20年間に渡る岡田さんのノート試行錯誤結果ということです。
 岡田さんは1958年生まれで、今54才。僕は1979年生まれで、今34才です。岡田さんは僕のちょうど20年先輩に当たります。賢い人だなと思え、面白いと思う本を書かれた20才の先輩が、ちょうど20年分の思考錯誤の結果を公表しているのなら、僕はそこから学ぶことがたくさんあるはずです。こんなラッキーなことはあまりないと思います。
 そこには「うまくできているウェブサイトはノートに丸ごと写してみる」というような本当に泥臭いことが書かれています。つまり、そういうことだということです。「賢く見られたい」という見栄でスマートさを求めるのではなく、「本当に賢くなる」為に泥臭いことを厭わないという姿勢がバサッと公開されています。

 岡田さんは自分が賢いということをIQテストで認識したと書かれています。実は僕も似たような背景を持っていて、子供の時に受けたIQテストが良かった為、本当に恥ずかしい話ですが自分のことを天才だと思っていました。だから成績がパッとしなくなってくると「最近ロックを聞くようになったからだろうか、ロックは脳に良くないのかな、クラシックにした方がいいのかな」とか本気で考えていました。もちろん成績が落ちるのは自分の努力不足のせいですが、そうではなくて頭脳のコンディションが乱れているのだと考えていたわけです。
 この時に、僕は自分のことを真摯に見つめて、「メモを取る」に相当する努力をはじめるべきだったのです。そういうことに気づかないのは天才でもなんでもなくて、むしろバカだったわけです。
 そういう反省がずっとずっとあって、だからこの泥臭い本を読んでとても心打たれました。僕自身はもともと常にノートを携帯していて、特にノートの使い方の何かを特に変更したわけではありません。ただ、ノートに見出す意味と、それに向かうスタンスが少しだけ変化しました。

あなたを天才にするスマートノート
岡田斗司夫
文藝春秋


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あなたを天才にするスマートノート
岡田斗司夫
ロケット


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トンデモ本の世界―MONDO TONDEMO
と学会
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