summer tea.

 子供の頃は麦茶がもっとおいしかったなと思う。夏が来ると時折子供の頃住んでいた家のことを思い出す。家の北側が道路で、東は田んぼ、南は広い芝生の庭と畑、西は畦道と農業用の小さな水路だった。全部の窓と玄関を開けっ放しにして、風を取り込んだ家に炎天下から帰って、そして飲む麦茶はとてもおいしかった。冷蔵庫で作った氷の持つ独特の味が、融けた氷から広がって、薄くなった麦茶はもはやお茶と呼ぶにはチープ過ぎる独自の夏を代表する飲み物になっていた。僕はガブガブと麦茶を飲んで、汗は相変わらず噴き出した。

 子供の頃は朝に顔を洗わなくても平気だった。汗をかいてTシャツがベタベタになっても平気だった。体が泥だらけになっても平気だった。部屋用の服なんてなくて、うちでも外でも同じ服で、コンタクトもしてなくて、友達が呼びに来たらヤッホーって走って玄関を飛び出した。

 僕達は子供だった。夏が来ると嫌でも思い知る。
 夏になると僕達は子供の頃にしたようなことを沢山するからだろうか。
 ただ、僕達が潜り込んだ防空壕は埋められ、忍び込んだ廃墟マンションは取り壊されて、一方にはPTAのたて看板が、一方には新しいマンションが立てられている。まあそれはいいや、失われた物について語るときどうして僕達は饒舌になるのだろう。あの石版のことをノリト君は覚えているのだろうか。

 大人の行動力で、空想ではない宝探しに行きたいものですね。