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 スズメとか、ハトとか、カラスとか、他の鳥はまだ理解できないこともないけれど、ツバメって異常に速く異常に上手に飛びますよね。どうなっているのか全く理解できません。魔法のようにしか見えないので、ツバメを見ると軽いショックに打たれます。
 虫たちもどうなっているのか全然分かりません。あの軽さでこの空気の中をあれだけの速さで飛び回るというのは尋常ではないと思います。でも、羽ばたきの回数も尋常ではないので、まあなんとかなるんだろうなという風に納得はできます。ツバメはそんなに必死に羽ばたいているわけでもないのに、あれは一体どういうことなのでしょうか。それから、虫は自分の羽ばたきをどのようにコントロールしているのでしょうか。鳥はまだ、僕達が必死で手を振ってみるときの感覚に近いと思うのですが、虫はもうその何倍もの周波数で羽を動かしているわけですよね。ぼんやりと、「こんな感じで動け」と思うと、僕達が体の細部の動きを無意識に任せているように自動的に動くのか、それとも、ゾウの時間ネズミの時間的に虫の時間感覚は僕達よりもずっと素早いので一挙一動を全て意識できるのか、どうなっているのか気になるところです。

 ラジコンと比較するのもナンセンスだけど、僕が子供のころの飛ぶラジコンというのは2時間充電して飛ぶのは3分、みたいな性能でした。もちろん、これはバッテリーが生体と比べ物にならないくらいの効率の悪さだったから、ということだろうし、実際には飛行というのは歩行よりもエネルギー効率の良い移動手段です。でも、そうはいっても、ときどき花の蜜をちょっと吸ったりゴミを舐めたりするだけであんなに元気に飛びまわれるのか信じられません。

 実は、僕はもう本当に長い間、生き物が食べ物をちょっと食べるだけで元気に動けるという事実に驚愕したままなのです。鳥が地面をつつきながら、餌を探しまわって、それでときどき小さい虫とかを見つけて食べるわけですけれど、そんな虫一匹から得られるエネルギーよりも、それを探すために飛んだり歩いたり血液を循環させたりしたエネルギー、呼吸したり体温を保ったりしたエネルギー、飲み込んだり消化したりするエネルギーの方が大きいように思えて仕方ないのです。もちろん、そうでないから生物は命を永らえるわけですが、感覚的にどうも腑に落ちません。朝ごはんにご飯と味噌汁と魚を食べただけで、山に登れたり、たくさん考え事ができたり、おどろくべき効率の良さです。充電とかガソリンとかのほうがずっと分かり易い。

 生き物を見て、不思議だなと思うよりも、僕の場合はなんか騙されているんじゃないかと思うことがあります。