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 僕達の体は死んだ細胞に覆われている。本当に生きている細胞はその下にあって、いわば死んだ細胞を盾にして生きている。たとえば皮膚は真皮の上に角質だとかの表皮が載っていることで成り立っていて、変な言い方だけれど死んだ細胞がないと生きている細胞は生きることができない。動物細胞の細胞膜なんてちゃちなものだし、空気に曝されていてはすぐに乾燥して死んでしまう。
 だから、基本的には人間と人間が触れ合うとき、その接触面は死んだものと死んだものの接触だということになる。でも、もちろん僕達はそんな風に死と死の接触だとは思わない。恋人と手を繋ぐのは普通にとても嬉しいことだ。だとすると、細胞の生き死にというのは一体なんなのだろうと思う。つまり、体のある部分が生きているとか死んでいるとか、それはどういうことなのだろう。