やけに速く走る羊。

 安倍晋三首相は「長時間労働を前提に経済が成り立つのはおかしい。ワーク・ライフ・バランスの実現は少子化対策の観点からも重要なので、安倍内閣で本格的に取り組みたい」と強調した。 

時事通信社

 もう何日か前の記事だけれど、安部さんは良い総理大臣だなと思う。これはとても意味の深い発言だ。

 僕は今の教育改革の中身には反対だし、あとこの記事に出ているワーク・ライフ・バランスの実現というのはきっと国家が指導しようとするといびつな形にならざるを得ないのだろうなとも思う。

 当たり前のことだけれど、国家というのは国民の総体でできていて、そして国家が「良く」なるためには国民が「良く」なる以外に方法はない。はっきりいって僕達一人一人の問題で、政府だとか国だとかいう概念でコントロールしきれるものではない。でも、もちろん政治家はそんなことを言うわけには行かない。「皆さん一人一人の問題だから、本当のところは我々にはあまり大そうなことはできません。みなさんがんばって下さい」というのは政治の放棄以外のなにものでもない。

 街場の議論では「政治家はバカだ」ということでオチが付くけれど、本当は政治家の中にだって官僚の中にだって、たくさん勉強している頭のいい人はたくさんいる。そして彼らは多分本当に効果的な政治というものは小さなコミュニティレベル、あるいは個人の心がけといったレベルでしか発現しないことを知っている。予算の配分を考えたり、新しい法案を通したり、そういったことだけでは全てをフォローできないことを知っている。だから、どこにでも取りこぼしが存在し、そこからクレームが付くことは宿命的だ。ある意味では、彼らは文句を言われることを覚悟の上で物事を行っている。

 安部総理の「美しい国」という本が出たとき、「中身がない」という批判がたくさん飛び出した。だけど、中身というのは総理大臣をサポートすべき人々が作り上げるべきで、それは政治家や官僚だけではなく僕達のことでもある。完璧な内閣総理大臣も完璧な政治も存在しない、それは常に欠陥を持つもので、欠陥は各国民が補うことしかできない。