Banu Marcos eat squid every day!

 夜中に連絡があって、友達の家へゴキブリ退治をしに行った。僕だってゴキブリなんて大嫌いだけど、でもまあ何かの因縁で彼らが目の前に現れたのなら、退治するくらいのことはできる。

 以前、研究室にゴキブリが出たとき、「どうして昆虫の中でゴキブリはこんなに特異的に嫌われるのだろう」という、よくあるような話をしていて、それから僕はどうして虫という生き物がこんなに人類に忌み嫌われるのかをぼんやりと考えてみたけれど答えは出てこなかった。

 テレビを点けると、変わり者のおじさんが昆虫料理の研究をしていて、河原でバッタやトンボを捕まえ、そのまま焼いて食べていた。気持ち悪いなんてただの偏見ですよ、と彼はにこやかに言った。

 虫のことを考えるとき、いつも僕の脳裏に浮かぶのはかわいい小鳥達の姿だ。彼らはあんなにかわいいふりをして、そのくせ涼しい顔で気持ち悪いグロテスクな虫をパクパクと食べる。その食事風景を目にすると、そうか、食べるというのは本来こういうことなんだ、気持ち悪いとか汚いとか言ってないでワイルドにむしゃむしゃと食べるのが本当なのだ、と思う。

 僕たちの先祖だと言われているサルは昆虫を平気で食べる。だとすれば人類はかつて昆虫を普通に食べていた、と考えるのが自然だ。

 テレビでは昆虫料理研究家のおじさんを見て、あるタレントが「どうしてわざわざ虫なんて食べるのですか?」というような問いを立て、栄養分析の結果、昆虫にはとても豊かな栄養が含まれている、という括りに落ち着いたと思うのだけど、ここで立てるべき問いは、「どうして昆虫を食べるのか、ではなくて、どうして昆虫を食べないのか?」というものだ。

 僕たちの祖先は昆虫を食べていて、でもその習慣はなんらかの理由で廃れた。本当に不思議なのはこっちのほうなのだ。

 昔、所ジョージが「海にいる生き物はグロテスクでもありがたがって食べるのに、どうして陸に住んでいる生き物は気持ち悪がるのだろう? カニとかエビとか、海にいるから食べるけれど、あれがその辺を普通に歩いている生き物だったら誰も食べないに違いない」というようなことを言っていて、僕はものすごく感銘を受けた。

 なぜだろう?

 宗教では豚を食べない、だとか牛を食べないだとか決まっているところがあるけれど、海で採れる生き物にかんする規定はない、とイスラム圏出身のOが言っていた。

 サルは船を持っていなかっただろうし、サルから続く歴史を考えるなら、話は本当は反対でなければならないような気もする。
 陸の生き物は身近で、海の生き物はそれこそ未知のものだったはずだ。