糺の森と鎮守のトチ。

 ここしばらく、蚊に刺されるような場所にいることが多かったので、足首の辺りが刺された痕だらけになってしまった。まったく、この世界に蚊なんて奇妙な生き物がいなければ、日本の夏というものはもっと素敵になるに違いない。

 でも、「この世界に無駄な生き物はいない」というアイヌの言葉を信じるなら、蚊だって何かの役割を担っているに違いないし、蚊なんて滅びてしまえばいい、というのは僕の自分勝手な意見にすぎないのだろう。

 それにしても、蚊というのは一体どんな役割を果たしているのでしょうね。
 もっとも単純な自然界のモデルは食物連鎖で描かれて、その中には、植物などのように無機物から有機物を作る『生産者』と、その有機物を食べる草食、肉食の動物からなる『消費者』、そして有機物を分解する『分解者』の3つがあります。
 蚊はもちろん『消費者』に属するのだと思いますが、でもなんかしっくり来ません。
 どうしてしっくりこないのかというと、たとえばオオカミのような『消費者』はウサギやなんかを食べることによって、ウサギが増えすぎることを防ぐというような役割にもなっているわけです。ウサギだって、草を食べて、その量をコントロールしている。でも、蚊は、花の蜜や草の汁を、それから時には人間の血液を吸っているけれど、だからといって草木にも人間にもたいしたダメージは与えないし、とても自然界に対する影響が小さいような気がしてしまう。

 蚊、どうにかならないのかな。
 吸血動物がそこらじゅうを飛び回る世界なんて、冷静に考えてみればまるっきり漫画みたいだ。