フリップ。

 先日の朝、自転車に乗っているとゴミ捨て場に3人掛けの大きなソファーが落ちていた。70年代後期から80年代に入った頃の雰囲気を持つなかなかかっこいいソファーだったし、ちょうど研究室にごろりと横になれるくらいの大きなソファーが欲しかったので、僕は立ち止まり、そのソファーをチェックした。

 ソファー自体はとてもきれいに見えた(潜在的な汚れに関しては何も分からない。あるいはこのソファの上で悲劇が何度も起こった可能性だってあるけれど、そういったことは時間と共に全部風化するものだ)。
 でも、ソファーには粗大ゴミ回収のシールが貼られていて、そこには丁寧な文字でこのソファーを捨てた人の名前が書いてあった。つまり、このソファーに関しては、丁寧な文字を書く持ち主と、京都市だか清掃業者だかの間で一種の契約が交わされていて、僕が勝手にソファーを持って帰るというのはそのささやかな取り引きに無理矢理押し入ることだった。とても、そんな強引なことはできない。
 
 少しだけ、その名前の表札を掲げた家を探してみたけれど、でも住宅街の中で目的の家がそう簡単に見つかるものではない。僕は急いでいたので、仕方なくその場を後にした。

 市役所に電話を掛けて聞くと、「持ち主さんに言って、引き取りのキャンセルを出してもらって下さい。そうすればソファーを持って帰ってもいいですよ」ということだったので、僕はお昼に急いでソファーのところへ戻った。
 でも、予想はしていたけれどソファーは回収された後だった。
 手を打つべきときに手を打たなくてはならない。タイミングを逃せば、その後でどんなに頑張ったところで二度と手に入らないものというのは沢山存在する。

 でも、収穫が全くなかったのかといえばそうでもありません。

 僕はこの日、京都市役所のどこに電話をかければ良いのか調べる為にインターネットで市役所のサイトを見ていたのですが、ゴミ関係のところから京都市が運営しているリサイクル仲介の存在を知りました。何か要らない物を持つ人が「こういうものが余っている」と登録し、それを見た人が「それ欲しいです」と直接連絡を取るシステムで、要はただの掲示板なのですが、でも、市(循環型社会推進なんとかといった部署)がそういった取り組みをするのはとてもいいことだと思う。
 実際に登録されているものはとても少なくて、実際にはまだこのシステムがうまくいっているとは思えないけれど、ちょっと手を加えれば随分素敵なシステムになるんじゃないかと思う。

 ヤフーオークションのように世界規模で物を売買できるシステムも便利だけど、地域に限定した方が便利なことだってある。

 宣伝くらいはしてみようかと思います。