ほっそりと伸びた腕。

 友達が、その友達から借りたCDが、二人の間を行き来する少しの間、僕の研究室にあったので、「これ、今借りていい?」と言って、パソコンに取り込んだ。
 そのCDというのは元ジュディ・アンド・マリーのゆきちゃんのアルバムで、僕は最近の邦楽事情にはひどく疎いのだけど多分新譜だと思う。

 高校生のときに付き合っていた女の子がジュディー・アンド・マリーのことをとても気に入っていて、彼女は歌が上手であるということが自慢だったので、いつも歌を歌っていて、このバンドの曲もよく口ずさんでいた。

 彼女はどちらかというとコンサバティブな人間で、「大学を出てOLになって結婚して仕事を辞めて母親になる」というのがどうやら将来のビジョンだったようだけど、僕が能天気に「そんなに歌が好きなら歌手や何かになって音楽で稼ぐといいんじゃない?」と言い続けた為に、「普通には働かない」と言い始め、よく分からないアマチュアバンドのボーカリストになり、そのあとはどうなったのか知らない。もう分かれてから何年も何年も経つ。そういう日々が現実にあったのだということが信じられないくらいの昔の話だ。
 ただ、本当に、僕は能天気だった。

 その高校生のときのガールフレンドの存在があろうがなかろうが、僕はジュディ・アンド・マリーというバンドはなかなか完璧なバンドの一つだと思うし、ユキという人はとても素敵なセンスの持ち主だと思う。作詞家、ボーカリストとして稀有の存在だと思う。

 自転車に乗りながら、そのアルバムを聞いた。
 優れた音楽を聴くと、いつも思うのだけど、僕たちは失いつつあるものを手に入れつつある。

 昨日、雑誌を立ち読みしていて八谷和彦さんのことを知ったので、慌ててネットで検索して、それから僕の入っているのと同じコミュニティネットワークにも入っていらっしゃったので、早速連絡をとることができた。ネットというのはほんとうに便利なものだと思う。
 八谷さんはすこぶる面白いことを考えて実行なさる方なので、もしよろしければ皆さんも検索してみてください。きっとわくわくしてくると思います。