京都から東京、2月、バイク、引っ越し and all: day 1

2015年2月8日、天気予報は今季最強の寒波がやってくると言い、僕はバイクで京都を後にした。 半年前のこの小さなバイクの旅、あるいは引っ越しのことを忘れてしまわないうちに書いておきたいと思う。とは言っても大体は既に忘れていて、さらにTシャツ…

狭い世界の外側の無数の専門的な広さ

パクリ問題で盛り上がるネットを見ていて、僕はコーヒーマニアのことを批判していた自分のことを恥じた。 まず、僕が持っていたコーヒーマニアに対する批判がどういったものなのか説明しておくと、だいたいは「本当はもっと別のことをしたいのに、それをする…

戦場のボーイズライフ序章「坂城」部分

-------------------------------------------------- ■ 坂城(1) -------------------------------------------------- 坂城(1) 「90歳なのに自在にインターネットを駆使して老後を楽しむおじいちゃん」というのが、今のところのマスコミの捉え方だ…

キティちゃん目覚まし時計3D修理

fab

小学生のときから20年以上使っているという目覚まし時計の修理依頼がありました。 修理とはいっても、クォーツのメカ自体は正常に動いていて外装に欠損があるだけです。欠損箇所は2箇所で、オーソドックスな目覚まし時計の頭に付いている「ピピピピッ!」…

color me pop

飛行機が離陸するとき、いつも鳥肌が立つ。地面から足が離れてしまう恐怖からでも、閉所に閉じ込められた恐怖からでもなく、この巨大なテクノロジーの塊が纏っている人類の知力と労力に圧倒されるからだ。航空力学、ジェットエンジン、構造設計、素材、塗料…

虚構として肥大した情熱とやりたいことの消失

1999年。僕は20歳で、ロバート・ハリスの「ワイルドサイド歩け」という本を読んでいた。「ワイルドサイドを歩け」というのは、有名なルー・リードの曲のタイトルだ。この本は比較的短いエッセイが集められたもので、今読み返すとなんだか若くてフレッ…

短編小説: 社説『着用トイレの普及について』

社説『着用トイレの普及について』 国内最初の着用トイレ『TON101』が売り出されてから、早くも20年が経過した。国内メーカーで着用トイレを生産しているのはIOIO,IMAXの2社。各社半年毎のモデルチェンジを重ね、今ではその薄さも1ミリを…

東京ハイパーリアル:彼女はシミュラークル

東京の空気の匂いは独特かもしれないが、それは自動車の排気ガスの所為ではなく地下から微かに立ち昇って来る下水の臭いだ。大都市1300万人が地面の下に押し込む糞尿と汚水が、無機素材で覆われた街へ漏れ出している。人口密度が高いなら、当然それに伴…

愛宕山ケーブル跡雪中登山日記

パズーとシータが「バルス!」と言ったとき、小学生だった当時の僕は「なんてことするんだ!」と思った。今でもそう思う。科学少年だった僕は古代のハイテクで空に建造されたラピュタに対して畏怖の念を抱いていて、それは愛おしさに近かった。もちろん僕が…

「ベイマックス」の構成とテーマ;ハートより視点転換

「お涙頂戴やさしいって素敵だね物語」ではなく、「ギークの為のアクションSF」であるという評判を聞いたので、それならと「ベイマックス」を見てきました。 この映画については4点書きたいことがあります。 1,映画のテーマは何か。 2,ロボットと人間と…

『選挙に行かない男と、付き合ってはいけない5つの理由』という詭弁の見本

「スランプってやつなんでしょうかこういうの? 最近は全然上達しない感じで、練習してもしても」 「まあいわゆるスランプってやつかな。今まで身についたことを一度全部捨ててしまってやり直した方がいいかもしれないね」 「えっ、どういうことですか?」 …

テクノロジーが権力を奪う

今日は選挙の投票日だそうですね。 昔書きかけでボツにした小説の一部を公開しようと思います。 _____________________________ 2018年4月1日グリニッジ標準時正午、インターネットが完全にハックされ、どのURLに繋ご…

トウモロコシを踏み潰せ!;「インターステラー」は「風立ちぬ」

「インターステラー」が、良かった。 「2001年宇宙の旅」との比較とか、「物理学者が入ってて物理学的な描写が正確」とか、そんなのはどうでもいいと思う。ちなみに物理学的考証がどうだかしらないが、話は「使い古されたSF話法ゴッタ煮滅茶苦茶のご都合…

インフルエンザ予防接種のこと;『予防接種は「効く」のか?』の紹介

(追記、2014年12月8日) この本は都合悪いことは書いてない、と指摘を受けました。 書きなおすか削除を検討します。 インフルエンザの流行が、また例年通りにやってきて、予防接種の話もそこここで聞かれるようになりました。僕は子供のときからずっ…

オーリーという奇跡と裸足と時代

高校生のとき、どこから手に入れてきたのか友達がスケートボードのビデオを見せてくれた。まだ1990年代の半ばでインターネットはほとんど普及していなかったから、youtubeもAmazonもなかった。求める情報があれば本屋に行くか、それを知っていそうな人に…

武術が「健康体操」であるということ

前回、武術で武器の練習をするのは「邪魔者でもある武器と仲良くなる為、ひいては敵とも仲良くなり、宇宙とも仲良くなる」という話をしました。でも、そうするとこんな疑問が起こるかもしれません。 「じゃあ、別に武器ではなくても、なんでも扱いにくい道具…

一本の棒が教えてくれること。杖術と宇宙

15年ぶりに杖を触りました。それも思い立ってアマゾンで買ったのですが、たった一本の棒が面白くて仕方ないので毎日振り回していて、そうするうちに武術のことを色々書きたくなったのでこれを書いています。 念の為ですが、杖というのはいわゆるおじいさん…

西海岸旅行記2014夏(51):6月21日、仁川国際空港、関西国際空港、死んだ家について

飛行機は3列シートの真ん中だった。通路側は大柄な何人か良くわからないおじさんで、自分が大柄なのを分かっていて小さく座っている。いきなりヘッドホンとアイマスク。窓側は髪の長い韓国人の女の子で、本を読みながらいかにも韓国人っぽく舌打ちしてため…

西海岸旅行記2014夏(50):6月19日、ロサンゼルス国際空港、僕は帰るのが嫌いだ

左手に沈みゆく太陽。深まる夕暮れの中、湾岸道路を北上してロサンゼルスを目指した。音楽は掛けていないし、ラジオも点いていない。別に感慨に浸っていたわけではなく、iPhoneの音楽はチャイニーズ・シアターで全て消去していたし、ラジオも最初はいいと思…

西海岸旅行記2014夏(49):6月19日、ソーク研究所、陰影の鋭い突然の終幕

少し店を見て回ったあと、僕達は結局"SUSHI ROCK"という日本料理屋へ入った。ここは変な名前だからずっと前に通った時から気になってはいたとマックンが言う。店内は若干の高級感を出そうとした作りだったが、定食があったのでトンカツ定食を頼む。店はビル…

西海岸旅行記2014夏(48):6月19日、ラホヤ、輝く街と謎の洞窟

翌日は昼過ぎに起きて身支度した。今日はマックンも休みなので、2人でどこかへ行こうということになる。僕の観光に対する熱意のなさは彼も了解済みだ。 「カールスバッドはレゴランドが有名だけど、まあ行かないよね」 「そうだね、行かないね。どういうと…

西海岸旅行記2014夏(47):6月18日:カールスバッドの長く短い夜

ミッドウェイ博物館を出た後、どこか気分の良さそうなところでゆっくり書物でもできないかと思っていたが、海沿いは大抵だだっ広くて日光もきつい。なかなか良さそうな場所がないので、面倒になってカールスバッドまで戻った。お腹が空いていたのでクッキー…

西海岸旅行記2014夏(46):6月18日:サンディエゴ、空母ミッドウェイの乾いた午後

翌日、僕は昼前まで寝ていて、起きたらマックンは既に会社へ出掛けていた。部屋は3階で、バルコニーの向こうは適度に開けている。落ち着いた昼前のアパートメントの影と、樹々の囁き、それからプールの水音。 昨日の夜、マックンにいくらか観光スポットを教…

西海岸旅行記2014夏(45):6月17日:カールスバッド、巨大資本チェーンと地方と再会

パサデナを出てから、悪名高き世界最大のスーパーマーケット、ウォルマートへ寄った。 ウォルマートは一時期、出店地域の小さな店を壊滅させることでかなり批判されていた。出店計画を発表すると地域住民が反対運動を起こしたりする。僕は、こういう批判には…

西海岸旅行記2014夏(44):6月17日:カリフォルニア工科大学、残り物のピザを食べる

翌朝、寝不足の体にシャワーを浴びてホテルを出た。11時にはロサンゼルス国際空港にクミコを送り届けなくてはならない。駐車場のフォルクスワーゲンは無事だった。オッケー、これでこの若干危なっかしいホテルはクリアだ。今日もロサンゼルスの空はこれで…

西海岸旅行記2014夏(43):6月16日:ロサンゼルス、ウエストコースト・ジャパニーズ

ベニス・ビーチを一頻りウロウロしてから、車を1時間ほど走らせて小高い丘の上にある住宅地へ向かった。クミコが昔住んでいた家があるのでその前で記念撮影をする。 それから、夕食の約束があったのでレドンドビーチの駐車場に車を駐めた。レドンドビーチは…

西海岸旅行記2014夏(42):6月16日:ロサンゼルス、ベニス・ビーチ、スケートボードは魔法

ベニス・ビーチの近くで適当に車を駐めるつもりだったが、空いているスペースがなかったので、「まあこの際有料でもいいか」と、道路沿いに現れた駐車場へ車を乗り入れた。係の男がやってきて「20ドル」と吹っ掛けてきたのでやめる。 「じゃあ、10ドルで…

西海岸旅行記2014夏(41):6月16日:ロサンゼルス、マリーナ・デル・レイのドギーバッグ

シャトルの展示を出た後、サイエンスセンターの中をウロウロして常設展を見た。常設展は、日本のそこら辺にある科学館と規模も展示内容もそんなに変わらない。壊れている展示も結構ある。子供達が大勢はしゃぎまわっている。お腹が空いたので何か食べようと…

西海岸旅行記2014夏(40):6月16日:ロサンゼルス、スーパーフラットな幻想と細部のもたらす現実

使い込まれてカッコイイけれど、ややハリボテな本物のスペースシャトルを見て、改めてさっき見たエンデバー運搬の短いドキュメンタリーを思い出した。それから歴代のシャトル打ち上げ動画も。 皮肉なことに、よりドラマチックだったのは実物ではなくて動画の…

西海岸旅行記2014夏(39):6月16日:ロサンゼルス、スペースシャトル「エンデバー」

カリフォルニア・サイエンスセンターではポンペイ遺跡の特別展をやっていて、それがフィーチャーされていた。火山灰に埋もれて死んでしまった人達も、まさか2000年後にこんな遠くで自分たちが展示されるとは思っていなかっただろう。サイエンスセンター…