西海岸旅行記2014夏(22):6月11日:サンフランシスコ、バンピーな車社会のはじまり


 これからは車で旅行!カリフォルニア・ロードトリップ!と意気込むものの、左ハンドルの車を運転するのも、右側走行のシステムも、アメリカの交通ルールも、全部はじめてだった。
 エンジンを掛ける。
 わお、サイドブレーキを右手で下ろすなんて。
 バックミラーを見ようとしたら左にはない、右側だ。
 最初に車をバックで駐車場から出すときは、少し車体感覚に戸惑ったけれど、それにはすぐ慣れた。
 ちなみに、アメリカでは車をバックで駐車場に駐めることは多分ほとんどない。基本的にはみんな前進駐車で、前から車を突っ込みやすいように駐車区画が設けられている。些細なことだけど、これはとても便利だった。一旦止まって、ギアをバックに入れて、などとしなくても、ヒョイとワンステップで駐車が終わる。買ったものなど荷物をトランクに入れたいときも、わざわざ通路側から車の後ろに回り込まなくていい。

 駐車場の出口、つまりレンタカーセンターの出口では一旦停止して、係の人のチェックを受ける。カウンターで貰った書類と車に付いているバーコードをリーダーで読み取って、この車が本当に僕の借りたものかどうかを確認するのだ。駐車場にはあらゆる種類の車が、窓開けっぱなしの鍵付けっぱなしで止まっているので、チェックがなければどの車にでも乗って出ることができる。
 出口には、車が絶対に一旦停止するよう、大きなバンプが付けられていて、このバンプが、日本ではちょっと考えられないくらい激しい高さなので、一旦停止を怠ると大変なことになるのは間違いない。この「一旦停止が必要な場所にはバンプをつける」というのは、色々なところで見かけたけれど、サンフランシスコ国際空港レンタカーセンターのは特別に大きかった。
 この「大きなバンプ」を見ると、アメリカは容赦無い実力行使の国だなと思う。日本であれば、一旦停止を無視してしまってバンプを踏んでも、まあちょっとガクンとなるくらいだと思う。そうでないと、無視した車両がバンプのせいで重大な事故を起こしかねない。こちらでは事故を起こしても、一旦停止しないお前が悪いというので片付けるのだろうし、突っ込んだら事故しそうなくらいのバンプを付けておかないと止まらない人も多いのかもしれない。
 「一旦停止」にはバンプだけど、「進入禁止」にはなんとスパイクが植えられている。スパイクは例えば場内から道路側へ向けて曲げられていて、出て行く車のタイヤには刺さらないが、入ってくる車のタイヤには刺さる、というようになっている。何度かこれの上を通ったけれど、順方向だとしてもスパイクの上を走るのは心地よいものではない。

 駐車場を出ると、いよいよ公道だ。
 すぐにフリーウェイ(高速道路)で、片側が5車線もある。一番右からフリーウェイに入ったのに、クミコがすぐに一番左まで行けと言う。サンフランシスコは渋滞で有名な街で、道路は車でギッシリ埋まっている。

「右側は出口とか合流があって遅いから、一番左の車線まで指示器出してどんどん行って」

 クミコの言うことは最初無茶に聞こえたのだが、やってみるとなんてことなかった。
 アメリカでびっくりしたことの一つは「車の運転マナーがとてもいい」ことだ。基本的に指示器を出したら入れてもらえる。ちょっと日本では考えられないくらいに入れてもらえる。カナダで暮らしていた友達が、「日本のドライバーはマナーが悪い」とぼやいていたことがあったけれど、多分それは本当だろう。いかにもアジアの一国らしい混沌とした運転が日本では行われているが、アメリカの道路は秩序だっている。ドライバーにゆとりを感じる。
 僕の住んでいる京都は運転がひどい。いかにも運転が乱暴そうな大阪から来た人でも、「京都のドライバーって何。。。」と言うことがある。一応観光都市として、トラフィックの4分の1くらいが我が物顔のバスとタクシーで占められているからだろうか。それでも大量の路駐があるからだろうか。そこに学生の街を象徴するかのように大量の原付きと自転車が加わっていて、他府県ナンバーは道に迷って立ち往生し、一本裏の道に入ると狭くてほとんど全部一方通行だからだろうか。

 今日はサンフランシスコの中心部にモーテルを予約していた。Beck's Motor Lodgeというそのモーテルはリノベーションしたばかりということで、それなりの値段もしたのだけど、駐車場に車を駐めたところでは普通のうらぶれたモーテルにしか見えなかった。大丈夫なのかここ?という雰囲気すらあって、フロントへ行くと太ったオタクっぽい気の弱そうな青年が、非常に声の大きな4人の馬鹿騒ぎしているマダムの相手と電話の応対を1人で忙しそうにしていた。予想に反してサンフランシスコはシアトルよりもかなり寒かったのだが、どうしてかフロントではエアコンがガンガンに入っていて、マダム達のでかい声と電話のベルが鳴り響く狭くて寒い空間で、僕達はなにか間違えたところに来てしまったかもしれないと思いながら順番を待った。外では夜の帳が緩やかに一帯を飲み込みはじめていた。

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