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goodbye:掃除機,hello:お掃除ロボ.

 子供の頃、部屋にテレビがあって、それにはリモコンが付いていなかった。電源をオン・オフするとき、あるいはチャンネルを変える時、僕は手元に置いてあるグロック18のエアガンでスイッチを射っていた。ものぐさだから、というのは実は理由になっていないのかもしれない。一発で狙ったスイッチに命中するとは限らないし、命中してもそのスイッチが砕け散ったりするし、BB弾も部屋に散乱する。後片付けやテレビの受けるダメージなどを考えると、立ち上がって3メートル先まで移動、手でスイッチを操作、という方が安易だ。
 でも、僕は立ち上がらなかった。意地でも立ち上がらなかった。なかなか8チャンネルに命中しなくても、BB弾が8チャンネルを叩くまで何度でもグロックを撃った。
 それは手元のエアガンでテレビのチャンネルを変えるという行為が魅力的だったからなのだろう。端的に。

 昨日、お掃除ロボットが床や畳の上を動きまわるのを見ながら、エアガンでテレビを操作していたことを思い出した。お掃除ロボは届いて充電が完了したばかり。つまり僕の部屋をお掃除ロボが掃除するのははじめてのことで、そして僕は感動した。

 感動というのは随分大袈裟に聞こえると思う。ここで僕が感動していることには、チェンネルをエアガンで変えるのに似た愚かさも含有されている。掃除という目的を第一に考えるのであれば、人間が掃除機を掛けたりクイックルワイパーを掛けたりする方がきれいになる。

 さらに、僕が買ったお掃除ロボはあの「ルンバ」ではなく、「LAQULITO CZ-860」というアマゾンで6980円のいかにもダメそうなお安い製品で、届いたパッケージに書かれたintelligentの文字が悲しいくらいの物だ。
 実際の動作もintelligentではなく、昔の子供が電子工作入門としてよく作っていた「壁にぶつかると物理的スイッチングで進行方向を変える壁伝いマウスロボ」と大差ない。今時、この程度の物を「ロボット」と呼ぶことには強い抵抗すら感じる。

 それでも僕は、いくぶん不覚にも、感動した。
 まず、このお掃除ロボは6980円にも関わらず、アマゾンの評価通り役に立つ。ロボットというものが、実際に自分の生活を助けてくれるという体験は僕にとってはじめてのことだ。もちろん、広義のロボットは既に僕たちの生活を助けてくれている。全自動洗濯機をロボットと呼ぶなら、全自動洗濯機は間違いなく「お洗濯ロボ」で、エアコンをロボットと呼ぶなら、エアコンは間違いなく「エアー・コンディショニング・ロボ」だ。
 でも、こういう「ロボット」達は、その場に留まっていて地味だ。お掃除ロボのように、自分で動きまわってくれないといまいちロボ感が出ない。

 その点、このお掃除ロボはロボ感が抜群だといえる。あちこち動きまわってゴミを吸い込んでくれる。
 けしてintelligentではないものの、意思すら感じそうになる。
 昔、群知能か何かの実験で、「ぶつかったら90度右に回って進む」という機能しか持たない小さなロボットをたくさん箱に入れると、コロニーの中の昆虫と見分けが付かないくらい複雑な動きが発現するというのがあったけれど、それに似ているのかもしれない。
 加えて、自分の為に動いてくれているという勝手な負い目がある。それ程的確な仕事でなくても、自分の為にロボットが何か目に見えて動いてくれているというのは、チューリングテストをぶっ飛ばして意識の創発を認めさせるような錯覚を生む。

 僕達はロボットの時代を迎えようとしている。
 昨今次々とニュースに搭乗する「自動運転の車」はその象徴だし、僕にとってはこのチープなお掃除ロボがそうなのかもしれない。6980円の中国製お掃除ロボは革命だ。これは誇張ではなく革命で、なぜなら僕は今後「自分で掃除機を掛ける」という行為の頻度を極端に減らすことができるからだ。もう自分でしなくても、お掃除ロボをポンと床に置いてスイッチを入れれば、多少お馬鹿ロボットでもなんでも(部屋の真ん中にはあまり行ってくれない。。)あとは勝手に掃除をしてくれる。

 たぶん、ここには乗り越えがたい精神的な障壁が存在している。
 僕はハイテクが好きだし、「このお掃除ロボ程度のものはハイテクでもなんでもない」と頭では理解している。もう21世紀だし、掃除くらい、せめて掃除機掛けるくらいはロボがしたらいいじゃん、と頭では思っている。
 だけど、悲しいことに「掃除は人間がするもの」という固定観念が自分を捉えているのも認めざるを得ない。家庭用のお掃除ロボが存在しない時代を生きてきた人間の悲しい習性が自分の中にあることを認めざるを得ない。
 急に「6980円で明日から掃除機掛けしなくて良くなります。かわりにロボットがします」と言われても、なんだか信じられないような気分になってしまう。でもお掃除ロボの背中を開けるとゴミはしっかり取れている。このintelligentではないロボの場合、これまで存在しなかったのは主にバッテリーの問題か、単に市場がなかっただけだと思うけれど、それでも時代が、テクノロジーが新しいフェーズを迎えつつあるのを意識しないわけにはいかない。
 僕はもう掃除機を掛けない。

(20147月22日追記;掃除機よさらばと言ったものの、、もうバッテリーの持ちが半分以下になりました。。2週間で)

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