書評:『ベーシック・インカム入門』山森亮

ベーシック・インカム入門 (光文社新書)
山森亮
光文社

 ここのところしきりにベーシック・インカムと言っていますが、やっと山森亮さんの『ベーシック・インカム入門』を読みました。
 そして、ついに帰って来れなくなってしまいました。
 帰って来れないというのは、もうベーシック・インカムのない今の社会が断然おかしく思えて仕方ない状態になってしまったということです。

 はじめてベーシック・インカムという言葉を耳にされる方の為に簡単に説明しておきますと、
 ベーシック・インカムというのは、

「国民全員に文化的な生活のできる最低限のお金を無条件で支給する制度」

 のことです。

 そんなことできるわけないだろ、何の夢物語だ、と思われるかもしれませんが、もう概念自体が提出されてからは数百年が経過していて、”現代的な”議論も何十年も行われてきました。
 その結果、これは可能であろうという結論がもうあると言って良いと思います。
 可能である、という断言ができないのは、一応まだある程度大きな規模での実験が成されていないからです。
 議論は尽くされているので、もう実行してしまう段階だとは思います。
 最大の障壁は「働かざるもの食うべからず」という骨身に浸透した近代のイデオロギーです。たぶんそれだけです。もう僕達はみんなが働かなくても豊かな生活をするに十分すぎるテクノロジーを持っているのですが、働かないと駄目だと思っていたり、働いていない人にお金を上げてはいけないと思い込んでいるので、無理矢理どうでもいい仕事を作ってどうでもいい製品を作って、その為に自然破壊して、その為に過労死したり鬱になったりしているわけです。バカの極みです。この社会は確実に狂っています。

 山森先生の本は冒頭、キング牧師の話からはじまります。
 そうです"I have a dream"のスピーチのマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの話です。
 彼はノーベル賞ももらっているし、とても有名なので知らない人はいないと思います。
 でも、彼がどういう「政策」を考えていたのかはあまり知られていません。
 僕も実は良く知りませんでした。
 彼が求めていたのは言わばベーシック・インカムです。

《すべての個人が無条件で生活に必要な所得への権利を持つ》

 キング牧師が暗殺された1968年からもう40年以上が経過していて、その間にベーシック・インカムに関する議論は世界中で尽くされてきました。
 なにも、最近ぽっと現れたトンデモなアイデアではありません。
 実際に、1968年の5月、すでに全米1200名以上の経済学者が連盟でベーシック・インカムは可能だし望ましいという宣言を出しています(232ページ)。
 結論というのはもう40年以上前に出ていて、さらにそれから40年間研究が進み、そしてようやく僕達の耳にアイデアが届くようになったということです。

 国民が合意さえすれば、僕達は明日からでも、誰もが働かなくても十分に生活できて、働きたい人は楽しく好きな形で働くという、そんなイキイキとしたワクワクする社会を実現することができるのです。

 そんなの話が上手すぎて信じられないという人は、今このブログを読まれているパソコンなりスマートフォンなりをじっくり眺められてください。その小さな箱の中に詰め込まれたテクノロジーはもはや信じられないようなものではないでしょうか。僕達は信じられないほど高度に発展した世界を既に生きているのです。
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ベーシック・インカム入門 (光文社新書)
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