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the big bang theory: The Dumpling Paradox, part2

ギョーザ矛盾問題を解け! その2

「それに、ペニー、ゲームにはゲームの倫理ってものがあるんだ」
 シェルダンがまだぶつぶつ言いながらリビングへ戻ってきた。
「ペニーはもう帰ったよシェルダン
「えっ!あっそう。バイバイくらい言ってくれてもいいのに」
 シェルダンが上げた手の下ろし場所に困っていると、ドアを開けてペニーが戻ってきた。
「問題が起きたの」
 するとシェルダンがすかさず言った。
「分かってるよゲームで手が痛いんだろ、それは手根管症候群というやつだよ、当然の報いと言える」
 ペニーはこの人は一体なにを言うのだろうという表情でシェルダンを眺めた。レナードが、何の問題が起きたのさ、と聞くと、ペニーは「うーんとね、なんていうかハワードとクリスティが私の寝室でそういうことしてるみたいなの。。。」と言い、オエッという表情をした。
「本当に?」
「農場育ちの私に言わせれば、もしもセックスの音じゃないとしたらあれはハワードが搾乳器に搾られている音よ」
 シェルダンがその光景を想像して顔をしかめた。
「今日、私ここで寝ていい?」
「もちろん。このカウチで寝ればいいさ。それか僕のベッドでもいいよ。うん僕のベッドでも。新しい枕買ったばかりだし、低アレルギー性のいいやつをさ」
 レナードはそれとなく自分の寝室で寝ることを薦めたがペニーは全く取り合わない。
「あー、うん、このカウチでいいわ私、ありがと」
 そこへシェルダンが口を出した。
「ちょっと待った、レナード、ちょっと話がある」
 シェルダンが台所の方へ歩いていき、レナードはまた始まったという顔でシェルダンの後について行った。
「言わなくても分かるよ、ペニーを泊めることに反対なんだろ」
「というか誰も泊めない主義なんだよ。正直なところ、もしも僕がここの家賃を一人で払えるなら君にも出ていってもらってる」
「それはずいぶん素敵な友情だこと。他には?」
「緊急避難セットだよ。うちには2日間分の緊急避難セット2人分しかない」
「だから?」
「だから、もしも地震が来て僕たち3人がここに閉じ込められたら翌日の午後には食料がなくなる」
「まさか地震が来たら僕たちが共食いする羽目になるからペニーを泊めたくないって言うわけ?」
「極限状態では何が起きるかわからない」
 もういいという風にレナードは頭を振ってペニーの元へ戻った。
「ペニー、寝てる間に僕たちの肉を噛みちぎらないと約束してくれるなら泊まっていいよ。毛布と枕を持ってきてあげる」
「オッケー、わかった。どうやら僕の意見は完全に無視されているみたいだね。明日の朝のスケジュールについて話させてもらおう。僕はトイレやお風呂を7時から7時20分まで使うから、それ以外の時間に顔洗ったりトイレしたりするようにペニーは時間調整して」
「トイレの時間なんてどうやって調整するのよ」
「11時以降は何も飲まないことをお勧めする」
 とシェルダンが言い放ったとき、レナードが、枕と毛布を持って戻ってきてカウチの上に置いた。
「はい、ペニー、どうぞ」
「ありがとう」
 枕と毛布を整えるペニーを見てシェルダンが「ククッ、間違ってるなあ」と言った。
「何が、間違いなわけ」
「枕の位置さ。頭は反対側にしなきゃ」
「なんでよ」
「どこの文化圏においても普遍的なことだけど、寝るときは足をドアの方に向けるんだよ。襲撃者から身を守るため人々は古くからそうしてきた」
「あっそ、私襲われてもいいから」
「へー、そうかい」
「他に何か私が知っとくべきことある?」
「あるよ。もしも間違って僕の歯ブラシでも使おうものなら、そしたら僕は窓から飛び降りて死ぬから。そしてどうかお葬式には来ないで下さい。おやすみ」
 シェルダンは窓を指さしてそれだけ言うと寝室へ歩き去った。
「ごめんね、シェルダンがあんな感じで」
 レナードが代わりに謝った。
「いいわよ。全然」
「一応言っておくと、シェルダンの歯ブラシは強化ガラスのケースに入れて紫外線の殺菌ランプの下に置いてある赤いやつだから」
「らしいわね」
「うん、じゃあ、おやすみ。ぐっすり寝て」
「ありがとう」
 でもレナードはペニーのもとをなかなか離れずにどうでもいいようなことを言い出した。
「ぐっすり、って考えてみたら変な表現だよねー。ねっ。なんでぐっすりっていうんだろう。昔の人は。。。」
 ペニーは腕を組んでそれを冷たい目でじっと見てレナードを追い払った。
「おやすみ」
 ペニーはリビングの電気を消してカウチの毛布に潜り込んだ。

 シェルダンが「無視されている」と言っていたけれど、本当に無視されていたのはシェルダンではなくラジェシュだった。シェルダンとレナードが寝室に引き上げ、ペニーがリビングの明かりを消したとき、ラジェシュはキッチンでサンドイッチを食べていた。ペニーがいたから照れ屋の彼は話すことができず、黙ってサンドイッチを食べていたのだ。仕方がないのでラジェシュはこっそりと部屋を出ていくことにした。サンドイッチを軽く振ってみんなにバイバイをして、ソロリと部屋を開けて外に出た。

「えっ?誰」ラジェシュがドアを閉める小さな音でペニーは目を覚まし、不安そうに周囲を見渡した。そしてシェルダンの言っていた”文化的慣習”を思い出して枕の方向を反対に変えた。

 翌朝、一番に起きてきたのはシェルダンだ。シェルダンはシリアルの入ったボウルを持って、いつものカウチに座ろうとした。でもそこにはまだペニーがぐっすりと眠りこけていて、シェルダンは座ることができない。他のイスに座ればいいんだけど、シェルダンはいつも同じ場所じゃないと気が済まないのでペニーの顔の上に座ろうかとか色々まごまごしているとレナードが起きてきた。
「何やってるんだよ!?シェルダン
 シェルダンはレナードの所へ駆け寄って言った。
「この部屋に住み出してから土曜日の朝はいつも6時15分に起きてボウルにシリアルを入れてそこにカップ4分の1の脂肪分2パーセントの牛乳を入れてカウチのここの部分に座ってテレビのBBCアメリカを点けて”ドクター・フー”を見てるんだ」
「でも今日はペニーがまだ寝てるじゃん」
 レナードが怪訝な表情で諭すと、シェルダンは全く同じことをまた言い始めた。
「この部屋に住み出してから土曜日の朝はいつも6時15分に起きてボウルにシリアルを入れてそこにカップ4分の1の。。。」
「分かってる分かってる」
 レナードは遮って言った。
「自分の寝室にもテレビあるんだから、ベッドの中でシリアル食べながらテレビ見ればいいじゃん今日は」
「でも僕は病人でも母の日のお母さんでもないから、そういうことはしない」

 2人がそういう会話をしているとペニーが目を覚まして寝ぼけた声で言った。
「うーん、おはよー、今何時ぃー」
「6時半になるところ」レナードが答える。
「えっ!ほんとに!私丸一日寝てたの?」
「いや、そうじゃなくて朝の6時半だよ」
「なによ、あなた達こんな朝っぱらから」
 ペニーは顔をしかめてまた毛布に潜った。
「こんなことをしている間に僕のシリアルは分子の結合が緩んでしまった。もうここにあるのはシリアルじゃなくて細切れでベトベトの小麦ペーストだよ」
 シェルダンがシリアルを捨てようとするところにドアを開けて向かいの部屋、つまりペニーの部屋から、クリスティと実りある一夜をすごしてハイテンションのハワードがやって来た。
「オッハー! 非モテの諸君!」
 うるさいハワードの挨拶を聞いてペニーが再び毛布から顔を出して起きあがった。
「あんた達なんでそんなに寝るのが嫌いなのよ、もー。っていうか、ハワード、あなたが着てるのって、ひょっとして私のローブじゃないの?」
「うん、そう、勝手に使ってごめんね。ちゃんと洗濯して返すよ」
「もう要らないからとっといて」と、ペニーは頭を抱えた。
「それでクリスティは?」
「今シャワー浴びてるよ。あっ、そうそう。そういえばさ、あの体洗うスポンジってどこで買ったの? あれいいね。うちのじゃ届かないところまでちゃんと洗えたよ」
 ペニーはもはや呆然とした表情だった。
「あなた、私のスポンジまで使ったの。。。」
「僕っていうか、正確に言うと、僕たち、だけどね」
 ハワードは嬉しそうにフフフと笑った。
「スポンジも上げるから、もう要らないから、とっといて。。。」
「うん。それから、君のクマのぬいぐるみコレクションも見ちゃったよ、クククっ」
 そして廊下からクリスティの声が聞こえてきた。
「ハワード、どこ?」
「ここ、ここ、こっちだよ、僕のかわいこちゃん」
 クリスティがドアを開けてこっちの部屋にやって来て「いたいた、私の小さいエンジンちゃん」と言い。ハワードがエンジンの物真似をして音を立て2人は抱き合ってキスをした。それから彼女はみんなに挨拶をした。
「こんにちは、私クリスティ」
「こんにちは、僕はシェルダン
「僕はレナード」
「2人のことはハワードに聞いてるわ。いつもハワードの後をくっついて歩いてるって」
 レナードとシェルダンは複雑な表情をしたが反論するのはやめておいた。
「それで、クリスティ、あなたどういう予定になってるのよ」
 ペニーが尋ねると、クリスティはハワードがビバリーヒルズに買い物に連れていってくれることになっていると答えた。
「うん、そうじゃなくて、泊まるところの話なんだけど、正直なところ、うちに泊めてあげるのってちょっときついのよね」
「それについては何の問題もないよ、クリスティはうちに泊まればいいんだから」
 ハワードが言った。
「でもハワード、君はお母さんと住んでるじゃないか」レナードが水を差す。
「なに言ってるんだよ、お母さんなんかと住んでるわけが、あるんだよなー、それが、うんお母さんと住んでるんだ」
「よし、それで決まり」と少しイライラしたシェルダンが言った。「クリスティはハワードのところに泊まる。そうすればペニーは自分の部屋に戻れるし、僕はカウチに座ってドクター・フーの残り24分を見れる」
「シェルダン、そんな勝手にさっさと全部決められないよ」
「もう話はオシマイ、みんな出てって、僕はテレビを見る」
 シェルダンの解散宣言によってみんなはリビングを出ることになった。
「お母さんいるけど、ウォロウィッツ家に来てくれるよね」
 ハワードがクリスティに聞くと、クリスティは「ウォロウィッツ家って何、メキシコ料理やか何か?」と聞き返した。
「そうか、言ってなかった。僕の名字はウォロウィッツって言うんだよ。僕のうちに泊まることにするよね?」
「わー、そうなんだ、ウォロウィッツって名字なんだ、わお、じゃあユダヤ人でしょ。私ユダヤ人の男は初めてよ、みんな!」
 クリスティは嬉しそうにそう言って、身支度をしにペニーの部屋へ戻って行った。
「クリスティってかわいいだろ。クローン人間の技術が確立されていたら12体はクローン作るね」
「あのさ、ハワード、君さ、あの子にいいように使われてるの分かってる? これから買い物で色々買わされるんだろ、どうせ」
 レナードがちょっと気まずそうに言った。
「そんなの構うもんか。昨日彼女が服を脱いだの見て嬉しくて涙が出たくらいだぜ」
 それでも尚うれしそうなハワードを見てペニーが言った。
「ハワード、聞いて。私はクリスティのこと昔からよく知ってるの。あの子は物を買ってくれる男となら誰とでも、その人が物を買ってくれる限りセックスする女なのよ」
「本当に?」
「ええ、本当に」
「やったー!」
「えっ・・・・」
「ユダヤ人にはこういう時の為に蓄えがあるんだ、お金持ちでごめんよ」
(その3へ)