阿闍梨と白い犬

 アジャリ、アジャリ。
 と僕は小さく呟いてみた。

 それから、関係ないのは分かっていたけれど、”おじゃる”とか”まろ”とかその辺りの言葉が浮かび、「まろはあじゃりでおじゃる」と一人ごちてクククと頭の中で笑った。

 一昨日、東京に住む友達が「阿闍梨餅がとてもおいしい」というようなことをツイッターで言いました。
 僕が「京都の阿闍梨餅のこと?近所だけど食べたことがない」と受けたところ、「本店のは出来立てでデパートのとは一味違う」「時間が経ったのをオーブンで温め直してもおいしい」「濃いめに入れたお茶と食べるのが好き」などの情報を色々な人が寄せてくれた。

 そこで僕はさっそく阿闍梨餅を買いに行った。後でお茶を煎れて食べようと思っていたのですが、そのまま所用へ移動する最中自転車に乗りながら全部食べてしまった。

 たしかにおいしかったし、それに何より僕はお腹が空いていて我慢できなかったわけです。
 移動中に空腹を治めるような食べ方は、なんとなく、僧侶、ひいては阿闍梨が旅や修行の途中で餅を食べた様子を全くの勝手にイメージさせて、僕はこれも全く勝手に長旅の途中空腹を凌いでいる人間の気分になった。

 アジャリ。
 考えてみれば随分と面白い音だ。
 僕は阿闍梨という言葉の意味を「偉い僧」という程度にしか知らなくて、アジャリって偉いのだよなあ、なんとも変なインチキ臭い言葉だなあと、得も言われぬ可笑し味を感じて、それでやっぱりクククと頭の中で笑った。

 そのように、阿闍梨という言葉がずっと引っかかっていたので、昨日阿闍梨という言葉についていくらか調べました。
 阿闍梨というのはサンスクリット語で「規範」という意味だそうです。それでお手本になる教師役の偉い僧のことを阿闍梨と言うよう。阿闍梨にもなんとか阿闍梨というのが色々あって、宗派によってどうだとかあるようだけど、そういうのは僕にとってはどうでもいいことだった。

 どうでもよくなかったのは、検索結果に出てきた比叡山大阿闍梨酒井雄哉さんのことです。
 大阿闍梨

 酒井大阿闍梨は千日回峰という過酷な行を二度修めている。僕はそのことは漠然と知っていた。でも、千日間、山の中を毎日歩く修行かあ、変わった人もあるものだ、と思っていた程度だった。

 昨日実状を知って僕は度肝を抜かれた。
 
 (続く)
以下は酒井大阿闍梨の千日回峰行ドキュメンタリーです。
http://www.youtube.com/watch?v=SKcie3yOZ0I&feature=youtube_gdata
二千日回峰行―大阿闍梨・酒井雄哉の世界
リエーター情報なし
佼成出版社


一日一生 (朝日新書)
リエーター情報なし
朝日新聞出版