水の無線輸送

 この間「テクノロジーが発達して、色々なものがモバイルになると自然と都市が融合する」みたいな話を書きました。

 その後、ベッドはどういう風にポータブルにするとか、台所はとか色々考えていて、最終的に「水と食料」は難しいなと思った。

 食料はもちろんフリーズドライにするなどの手段があるけれど、これは味も関わってくることだし、サプリにして栄養だけとればいいという話でもない。キチンとおいしい食べ物をどこででも食べられるというのは難しい。

 水はもっと大変だ。食べ物はまずくてもいいならフリーズドライなどで軽くすることができるけど、水はそうもいかない。しかも、フリーズドライ食品の軽くなった分は水分な訳だから、もしもフリーズドライ食品を持ち歩くならその分余計に水を持ち運ぶということになる。

 逆に、味を我慢するなら、水問題さえ解決できれば、フリーズドライ食品によって「食」のポータビリティもグンと上がることになる。

 水。
 僕達にとって本当に本当に大事な水。
 ずっと人は水の近くで暮らしてきた。水を求めて移動してきた。
 都市では水道の蛇口から無制限に水が出る。この重要な都市の機能をどうしたら僕達は持ち運ぶことができるのだろうか。

 僕達は体が一日2リットルの水を必要として、お風呂は200リットルくらい水が要るし、洗い物もやっぱ水でしたいし。かといって200リットルの水だけでも200キロの重さがある。体積だって200リットルもある。ペットボトル100本も抱えて日々移動する事はできない。それができたとしても毎日水を200リットルどこかで入手しなくてはならない。

 お風呂は我慢すれば、という意見もあるだろうけれど、ここではそういった快適な生活を諦める方向は見ないことにしています。
 身軽にどこへでも好きなところへ行って、そこで湯船に浸かりたいと思ったらなんとかして水を200リットルその場で工面したいわけです。

 以前に書いた、人々がハイテク装備で野外へ出て行くこと、それが都市そのもののモバイル化である、ということは、携帯電話の存在を必要条件にしています。都市では人々がいつでも連絡を取り合うことができて、それはとても重要な都市機能の一つです。

 携帯電話だけでなく、3G回線などを使ったモバイルインターネットも必要条件で、これらのガジェットが実現したのは紛れもなく無線技術の発達のお陰です。
 無線技術は電話を電話線から解放しました。PCをLANケーブルから解放しました。

 対して、水のインフラは今のところほぼ100パーセント有線です。水道管という有線。
 これを無線に変えれば、僕達の行動はもっっと自由になるに違いありません。

 従って、ここに無線給水網を提案しましょう。
 21世紀初頭が情報の無線化であれば、続く21世紀中盤は水道の無線化です。

 水道網の無線化というのは一見荒唐無稽です。情報はただ信号を送ればよいだけなので無線にできるだろうけれど、水という物質はリアルすぎる実体を持っているからです。
 もちろん、情報と水を同様に扱うことはできません。ただ、情報というものもまた物理的な実体を持った何かであるということは忘れてはいけないことです。僕達が扱っているのはいつもリアルでヘビーな実体です。たとえそれが情報通信であっても、そこには電磁場のやりとりというリアルが含まれているわけです。水というリアルだって、なんとかうまくすれば無線で送れないとも限りません。

 それでは水の無線輸送について考えてみましょう。
 水を無線輸送する、ということを言われると、誰もが最初に「水蒸気」を思い浮かべると思います。というか僕にはそれしか浮かばない。
 そこで、漠然と、大気中に十分な量の水蒸気を蓄えておき、それを随時引き出して使用するというスケッチが描かれます。

 インフラの管理者は至る所に作られた基地局で大気中の水蒸気を測定し、それが常にあるレベル以上を保つようにせっせと水を蒸発させて水蒸気を作る。必要に応じて巨大なサーキューレータとかで水蒸気の分布を調節する。
 もちろん、水蒸気が普通に大気中に拡散していては生活圏の湿度が上がってしまい不快になるので、水蒸気は空高くに集中して漂う形にします。雲になってしまうと降雨が増えたり、降らなくても空がずっと曇っているという悲惨なことになるので、この辺りは絶妙なコントロールが必要です。

 エンドユーザーは水が欲しくなった時に気球でネットのようなものを空に上げる。ネットには冷却システムが付いていて水蒸気がどんどん水になり付着、それを地面までロープ伝いに送る。
 その水を濾過して生活に使います。

 ちょっとバカみたいですね。
 でも、思い出して欲しい。最初の無線通信はモールス信号しか送れなかった。最初の携帯電話はでかい鞄みたいなのだった。バッテリーの関係で小さな携帯電話は絶対に作れないと言う人達もいた。一昔前のインターネットは今の100分の1くらいしか通信速度がなかった。それが今やiphoneで動画です。

 雨が増えるのではないかとか、環境にまつわる諸々が気になりますし、これは半分冗談みたいな話です。ただ、水を無線輸送することは砂漠を緑化するとかそういうことに使えるのではないかと思います。水蒸気が拡散するのを電磁界でコントロールしたりなんかして。

水の世界地図 第2版 刻々と変化する水と世界の問題
リエーター情報なし
丸善


地球は「沙漠」という資源をもっている―シルクロード・ジェネシスの構想
柴野 利彦
ダイヤモンド社
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