O+U 野外と都市

 コルビジュエの都市計画に、バーっと森林が広がっていて、近代的な高層建築がところどころ顔を出している、みたいなのがあったと思うのは僕の気のせいだろうか?
 自然と都市の調和した世界。
 人々は最新式のビルの中に近代的な生活の基礎を置き、そして一歩ビルの外には溢れんばかりの自然がある。

 勝手に、コルビジュエのアイデアスケッチまで脳裏に浮かぶのだけど。

 それが脳裏に浮かぶのは、最近増えてきた「おしゃれアウトドア」雑誌を捲っているときだ。ハイテク素材の高機能、かつカラフルでセンスの良い服に身を包んだ人々が海だとか川だとか山だとかで食べたり遊んだりしている写真。

 大袈裟に聞こえるかもしれないけど、近年のハイテクノロジーは都市と野外のボーダーをどんどんファジーに書き換えていっている。
 今まで都市というのは「あるスペースに築く」ものだった。今は都市機能の一部を携帯電話やネットブックなどで持ち出すことができるようになったので、土地そのものと都市のリンクは弱くなった。増加するモバイル機器が本当にポータブルにしたのは、音楽でも電話でもパソコンでもなく「都市」そのものだ。

 ハイテク装備を持った人々が野外に出るというのは、個人という極小の都市が野外の中を移動することでもある。都市と野外の融合。

 進化するのは電子機器だけではなく、服もテントもライトも食器も寝袋も全部だ。街での生活がどんどん進化したのと同じように野外生活もどんどんと進化して、将来的にポイポイカプセル(注1)みたいなものができたとしたら、そのとき「都市」の意味は大きく変わるだろう。今はその過程でもある。

 ポイポイカプセルとまで行かなくても、人々がみんなキャンピングカーのようなもので生活するようになればどうだろうか。
 今まで「家」というものはある土地にしっかりと建てられて、一度建てれば動かせなかった。それは家が丈夫でなければならないからだ。たくさんのものがあって、それらを全部収納しなくてはならないからだ。
 膨大な蔵書がipadの中に収まったように、荷物がどんどんと減ったらどうなるのだろう。ハイテク繊維ができて服の洗濯が要らなくなったり、汚れても水でさっと落ちて、パッと一振りで完全に乾く服ができたら洗濯機も乾燥機も要らなくなる。コンクリートの建物にも劣らない強度と防音性能を持ったテントができたら。それがワンタッチで設営できたら。疲れたその場がすぐ家になったら。
 住所の代わりにGPSの位置データで荷物も送ってさ。

 携帯電話が固定電話を駆逐したように、移動式の住居が固定住居を駆逐して、人々が世界をもっと自由に行き来して好きなところで暮らす時代だっていつかはくるのだろうなと思う。

(注1)鳥山明のマンガ「ドラゴンボール」に出てくるアイテムです。小さなカプセルだけど、投げると家になったり車になったりする。

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