white.

 昔学習塾でアルバイトをしていたとき、当時は売り上げが貧しい国に寄付されるというホワイトバンドが流行っていて、当然の用にそのパクリ商品も市場に溢れていて、たくさんの生徒達も腕にプラスチックかゴムでできたカラフルな輪っかを嵌めていた。一人の生徒が「先生、これってどういう意味?」と言いながら腕に嵌めた輪っかを見せに来て、見てみるとそこには"confidence"と書かれていた。なんでもないシーンだけど、不思議なことに以来心が揺らぎそうなときこのバンドのことを思い出す。confidence.

 告白すると、僕はこのホワイトバンドというのを買って嵌めていました。お金がどこに流れるか知らないけれど、少なくともなんらかの意志の表明にはなるのではないかと思ったからで、もしかしたら何か本当に大きな動きになるかもしれないと少しは期待していた。結局理念はあっさりと立ち消えて、そのあとにホワイトではないカラフルなワッカがファッションとして数ヶ月持続し、そして全てが忘れ去られた。僕はこのバンドのお陰でとても素晴らしい人に出会えたりもしたのでそれはそれで良かった。それから野外パーティーをしたときにガソリンタンクの蓋を開けるのに実用的な意味合いで役にも立ったし、300円だか500円だかの元は十分に取った。

 しかしながら、今振り返ればやはり可笑しなことに加担したなという仄かな後悔がある。とても素晴らしいと思っていた人とも地獄のようなことになったし、ガソリンタンクの蓋くらい気合でだって開けられただろう。それに本来このバンドは世界のヒエラルキーを抉じ開けようと作られた物のはずだった。ガソリンタンクの蓋なんて安っぽいものではなくて。

 二つ前の記事に紹介した町山智浩さんの番組で、WTOをおちょくるドキュメンタリーがあるのですが、僕はこれを見る以前にWTOがそんなに悪い組織だとは考えていませんでした。本当に間の抜けたことに。実は僕は世界の国家間でお金の価値に違いがあることをずっと納得できなくて、つまり途上国で作ると人件費が安く済んで製品が安くできる、というようなことがどうしてなのか全然分からなくて、ときどき友達にも聞いたりしたけれど、たぶんその回答の大半はWTOにあるのだろう。世界の貿易をコントロールしてるところなんだから当然のことかもしれない。