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 最近すこし忙しくしていて、そんなに一緒にいる時間もないけれど、それでも沢山の留学生達と一緒に暮らしていて時間に対する感覚が変わってきた。留学といっても短い人は半年だけで、夏休みのことを考えると実質は5ヶ月くらいのものだ。4月にやって来て、そして8月にそれぞれの国へ帰っていく。だから半年だけの彼ら彼女らにとってみれば6月10日というのはすでに日本滞在期間の半分が過ぎたことを意味する。残り2ヶ月で僕達に何ができるのだろう。始まったばかりだと思っていたけれど、本当はもう終わりがすぐそこまで来ていて、そう思うと時間の使い方について少しシビアにならざるを得ない。二ヶ月というのはたったの60日間のことだ。週末はたったの8回。夏休みに大事な友達が何人か去り、そして秋が始まる頃にまた新しい誰かがやって来る。そういうことの繰り返しに僕は耐えられるのだろうか。

 大学2年の頃、僕はある旅館でアルバイトをしていた。その旅館はほぼ修学旅行に特化した旅館で、基本的に小学生か中学生か高校生しか泊まりに来ないようなところだった。子供達を相手に、僕達は10個以上も積み上げたお膳をバタバタと運んだりして、それでも基本的には何もしなくていい時間の比較的多いアルバイトだった。まさかそんな区分があるとは思いも寄らなかったけれど、アルバイトはいくつかのチームに分けられていて、僕はほぼ女の子専門のチームに配属されていた。ただでさえ箸が転げてもおかしい年頃の女の子達が修学旅行のせいでテンションを高くしていて、それはもう実ににぎやかで、当然仕事中も話を交わすし、休憩しているときも探しに来てくれたりバイトが終わるのを待っていてくれたりして、大体の場合は随分仲良くなった。

 ところが、せっかくお互いが馴染んできた頃に彼女達(たまに彼ら)は帰っていく。長くて3日くらいしか京都には滞在しないわけで、それは当然のことだ。僕はこの頃スペインに行きたくてお金を貯めていたので(結局行かなかった)、始発の電車で旅館まで行って朝の仕事を10時くらいまでして、そのまま大学へ行き講義を受け、それから夕方6時か7時にはまた旅館に戻って10時くらいまで夜の仕事を、その後帰って寝て起きてまた旅館という生活をしていた。だから大抵朝に「バイバイ」と折角仲良くなった生徒達に別れを告げ、夕方に新しい生徒達を迎え入れるという日々だった。

 これは僕にとっては少しきついことだった。2,3日毎日朝と夜に会うと、なんだかんだいってそれなりに仲良くなるし、少なくとも「他人」から「他人ではない人にはなる」。そういう人々にバイバイを言うこと自体僕はあまり得意ではないし、送り出した後に当然部屋を掃除しなくてはならず、さっきまで笑い声が溢れんばかり響いていた旅館の中が、今度は急にしんと静まり返り、在るのはただ僕達数人のアルバイトが掃除機を掛けたりする音だけになる。それは見事に計算され尽したかのような寂しさの象徴だった。そうしてきれいにした部屋に、夕方新しい生徒達を迎えても、最初は違和感がどうしても存在する。「あの子達の部屋にこの子達がいる」という違和感を、楽しそうに案内しながらもやっぱり心の底に持たずにいられない。そうしてまた少しすると「この子達」とも仲良くなり、それから彼女達もまた「この子達」から「あの子達」へと変わる。めまぐるしいハローとバイバイの繰り返し。

 これが2,3日毎ではなく、2,3週間毎だったら多分僕は耐えられなかっただろうと思う。長ければ長いほど気心は知れる。だから1年毎に生徒が出入りする学校の先生という職業を選ぶ人々のことを本当にタフだなと思う。
 

 2009年6月7日日曜日
 鞍馬行きをキャンセルして研究室にいるも全然捗らない。この週末にはどうにかしようと思っていたので夜中まで粘っていたら3時ごろにホタルが一匹入ってくる。朝丁度ホタルの名所が今どんな具合か調べていたところ。外へ出してやるととても明るく飛んで行って、なんだか嬉しくなる。

 2009年6月8日月曜日
 昨日は結局結果を出せず。眠ったのは朝5時くらいだった。9時半に起きてレ・ブレドールへ寄ってから研究室へ向かう。久しぶりにここのパンを食べたけれどやっぱりおいしい。机に座ってパンを食べているとOがやってきて「昨日高野川へ行ったらホタルがすごかった」と言う。Kと遅めのランチ。またKと夜ご飯。ビールが飲みたいというので初めて大学の食堂のビールを買った。夜中にやっと計算が仕上がる。とはいってもbalence bandのheavy hole, light holeそれぞれに対して一番簡単な場合だけで、もっと一般的な場合についてはこれから。

 2009年6月9日火曜日
 Pとランチを食べていると今日は誕生日だと言うのでおめでとうと言う。夕方Tさんのミラノサローネ報告会を聞きに行く。Kと異常に早い夜ご飯を食べた後研究室へ戻り、9時に寮のロビーに集合してアンデパンダンへ。急なPの誕生日祝い。イェーガーマイスターというドイツのリキュールがあって、Aがフランスにも売ってないのになんでこんなところにと驚き、みんなしてショットで飲んでみる。おいしい。ラバダブへさっと寄ってから大豊ラーメンを食べに行く。