人口。


 僕には父親と母親が一人ずついる。つまり親は2人いる。人間は有性生殖なので、生きているか死んでいるかを考えなければ、誰にだって2人の親がいる。2人の親にだって、それぞれ2人の親がいて(つまり4人の祖父母)、さらにそれぞれがそれぞれ2人の親を持っているので僕の曾祖父母の世代では先祖と呼べる人たちは2x2x2=8人いることになる。

 この調子で、もっと世代を遡ってみるとどうなるのだろうか。たとえば30世代前の僕の先祖というのは何人いるのだろうか。計算は到ってシンプルで1世代遡る毎に2を掛けていけばいいから、30世代前のご先祖の人数は2の30乗人ということになる。これは吃驚するくらいに大きな数だ。2の30乗をそのまま計算するのは大変なので、これを(2の10乗)x(2の10乗)x(2の10乗)と見なす。幸いなことに電気情報系出身の常として2の10乗が1024≒1000だということは頭に叩き込まれているので、これなら簡単に計算ができて、だいたい1000の3乗=10億。

 世代を30世代遡ると、僕の先祖はなんと10億人いたことになる、というわけです。ここでまたざっくりと3世代で100年だと思えば、30世代というのは大体1000年前で、1000年前の全世界の人口というのは大体3,4億人です。10億人という数は重複を考慮していない数なので(先祖の重複はあまり考えたくない)、ざっくり100で割って1000万人。全人口3億に対して1000万人。世界人口の30分の1が先祖ということになる。

 もちろん、これらの計算は簡便に過ぎて、実際にはもっと沢山のことを考慮しなくてはならない(特にざっくり100で割ったけれど、ここは実際にはもっと大きな数で割ることになるはず)。だから色々と誤差はあるにしても、数千年だか数万年だか遡れば、僕の先祖の数と世界人口がイコールである時代に必ず到達し、人類最初の2人を待つまでもなく、僕達は全員が同じ祖先を持つと強く言わざるを得ない。