beautiful it.

 研究室に来ると、ホワイトボードがきれいになっていた。僕もOも何かを書いた後に消すということをせず、代わりに書く前に必要な分だけ消すので、ホワイトボードは基本的にいつも書き散らかした計算で何が何だか分からない状態だった。そのホワイトボードがすっかり真っ白くなっていて、一部に指数関数を元にしたグラフが描かれていたから、僕はOが先生と何かの話をしていたのかと思ったけれど、良く見てみるとそれは我々の分野の雰囲気を持っていなかった(後にそれは色彩工学のJの為にOが助言を行った跡だと分かった)。しかもご丁寧にネイピア数(自然対数の底)eの値が2.71.....と書き込まれていて、僕はそれを見て久しぶりにオイラーの等式のことを思い出した。

 オイラーの等式というのは、かつてリチャード・ファインマンが「宝石」だと呼んだようになんともエレガントなもので(人類の至宝だとも言われる)、

 (eのiπ乗)+1=0

 のことです。
 これはオイラーの公式

 (eのiΘ乗)= cosΘ+ i sinΘ

 に Θ=π を放り込んだだけのものですが、ネイピア数と虚数単位と円周率という摩訶不思議な数が極めてシンプルに関連付けられたちょっとできすぎなくらいにできすぎたものです。もともとeもπも全然関係のない定義から出来た定数なのに、それが1と虚数単位iだけで結び付くなんて。しかもこのiが入っているところが本当ににくいというかなんというか。もう虚数のない世界なんて想像も出来ないけれど、でもこの式で改めて虚数の”実在”性みたいなものを感じ取ることができる。数学とこの世界が本当に対応しているのかどうかは難しい問題だけど、本当に世界ってなんだろうと思う。
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