国籍法。

 「反対」という人がたくさんいる様子なのに僕には特に問題がないように見えたので、何が問題なのかちょっと調べてみないと分からないなと思っていると、改正国籍法が成立したそうです。結局良く分からないままなのですが、反対している人たちはどうして反対だったのでしょうか? この法律の改正案は日本を壊すと言う意見が所々に見られて、僕にはそれは単なる狭い村意識というか、日本人の血を汚したくない、みたいなかなり閉鎖的なものにしか読めませんでした。正直な話、今時まだそんなことを言うのかと思ってびっくりしたくらいです。

 元々「国籍法改正の問題はネットにしか出ていなくて、マスメディアはこれに対して口をつぐんでいる。日本のマスコミは終わった。」というようなことを書いている人が随分いて、それを読んでもなんとなく視野狭窄的な雰囲気を感じていたのだけど、たぶん新聞社としては普通に大した問題じゃないという見解だったのではないかと僕は思います。

 国籍法の改正案って何が悪いのか、詳しい方教えていただけると助かります。

 ざっと見たところ、多くの人が「国籍法」が法律の一つでしかないことをすっかり忘れているようにしか見えません。たとえばあるサイトに「改正案には扶養義務の規定がないから父親は扶養義務を負わないし、お金を貰ったりして大勢を偽装認知させることができる。妻子は日本国民の血税であるところの生活保護を受けて国内で暮らす」ということが書かれているのですが、そんなわけはありません。国籍法はあくまで「国籍だけ」を扱う法律であり、扶養義務なんかのことはここで扱わないし扶養義務に関する規定が書かれていないのは当然のことです。認知したら扶養義務が生じるというのは民法上の決まりであって、そこからはもう民法の話です。国籍法に何も書いていなくても、民法によって普通に父親は認知すると扶養義務を負います。当然のことですよね。上記の解釈は、国籍法には刑法のことが書いてないから人殺しも全然オッケーって言ってるようなものです。
 それに、100人でも認知できる、みたいなことをかなりの人が書いているのですが、これも国籍法だけに基づくものではないので、そう簡単に行くものではありません。当たり前のことを繰り返すけれど、国籍法では国籍の話しかしません。そして日本には国籍法のほかにも沢山の法律があって、帰化した人も当然それを遵守する必要があります。

 あと、国籍法改正案に反対する人々が守ろうとしているものが本当は一体何なのか考えると、なんとなくざわざわした気分になってしまいます。基本的な文脈が「豊かな私達の日本が外国人にたかられる」という人を馬鹿にするのもいい加減にしてほしいと思うようなものだからです。中には軽い怒りを覚えるようなものも散見されます。僕には比較的たくさん外国人の友達がいるけれど、彼ら彼女らの誇りを踏みにじるような文章です。それからコスモポリタニズムはどこいったんだろう。国なんてウンコみたいな概念が存続して世界をバラバラに刻み続けているだけでも驚きだというのに。
 ピース。

 追記。
 そういえば、これを書いていて思い出したのだけど、昔誰かが「日本のマツタケが高いのは日本人が日本人の血統を重んじているからだ」ということを言っていた。本当はそんなに味も香りも変わらないのに、輸入物は駄目な安物で、国産のだけが高級な本物のマツタケだというのはこれはもう品質云々ではなくて血統の問題だというわけです。マツタケにおいて血統の問題が現れるのは他でもないマツタケの形状の所為で、つまりあれは男性器なわけです。マツタケは男性の象徴だから、だから血統を重んじる日本人は国産をありがたがる。という意見でした。
 そのあと暫くしてフランス人のシェフと日本の料理人が互いに料理を教えあうという番組がテレビで流されていて、フランス人シェフがマツタケをミキサーにかけたのを見た日本人の料理人は絶句していた。「マツタケはなるべく形を壊さないで使うものなんです」って。このとき僕はマツタケと日本人の関係をフロイト的に読むのもあながち無茶苦茶ではないのかもしれないなと思いました。