鳥を眺める2人の女の子。

 2008年10月29日水曜日;

 夜中を12時も過ぎて、部屋に向かい自転車に乗っていると、御所の隣、寺町通りで2人の女の子が立ち尽くして道路を眺めていた。通り過ぎるときに彼女達が何を眺めているのか視線を追えば、道路には小さな生き物が落ちていた。一人の女の子が「死んだの?」と言う声が聞こえる。
 お腹もペコペコだったし寒いし、死んだかもしれないほどに重症の小さな動物に僕ができることなんて何もない、と心の中で呟いて、そして20メートル進んで僕は引き返した。

 戻ると女の子達は迷いながらも立ち去ろうとしているところで、道端に落ちていたのは小さな鳥だった。鳥は地面にしゃがんで頭も地面に付けたような低い姿勢をしてピクリとも動かない。死んでるのか、と僕が聞くと、女の子は「分からないけれど、どこからか落ちてきて車の風で飛ばされて転がってきた」と言った。
 僕は自転車を降りて地面にへばりついているような鳥に触れてみた。すこし力を込めて触ると羽の奥に生き物らしい暖かさを感じる。単に温度が高いというのではなくて、生きているということがはっきり分かる種類の暖かさだった。「生きてるよ」と僕は言って鳥を地面から掬い上げた。怖かったのか鳥はアスファルトにがっしりと爪を立てていて、引き剥がすのにすこし力がいる。こんなに強く地面を掴むならきっと元気に違いない。

 ライトで簡単にチェックしたところ、頭にちょっとした傷があるくらいで大きな外傷は見られなかった。目を開けてこっちをキョロキョロ見る。スズメにとてもよく似た鳥で、でもスズメよりも一回り小さかった。
 しばらく手の中で暖めていると、だんだんと元気になって来たので、頃合を見て手を開くと人差し指にちょこんと止まる。もう飛べるかもしれないと思い軽く指を振ってみるけれど、まだ飛べないみたいで必至にしがみ付いている。鳥の細い足から人差し指に微かな、でも力強い振動が伝わってきて、鳥が体温を上げようとしていることが分かる。こんなに小さな鳥でもうまくできていて強いなと、ウィンドブレーカーに包まった僕は思う。
 そのあと、5,6分くらい、2人の女の子と話をしながら鳥を眺めていると、鳥は急に大慌てで指から飛び立ち、マンションの明かりを横切って暗い夜空のどこかへ行ってしまった。
 それで僕達も挨拶をして家路に着く。


 2008年10月30日木曜日;

 Donnie Darko という映画を以前Oが薦めてくれたのを思い出して見てみると、なんと10月30日は作中でキーとなる日だった。ちょっと不思議な映画なので変な気分になる。こういう暗いのは僕には向いていない。