balance.

 ドアーズの”水晶の船”昔やっただろ?
 あれ今聞くと涙出るな、あのピアノ聞くとまるで自分が弾いてるような気分になってさ、たまらなくなるよ。もうすぐ何聞いてもたまらなくなるようになるかもしれないな、みんな懐かしいだけになってさ。もう俺はいやだよ、リュウはどうするんだ? もうすぐお互いにはたちになるんだからなあ。
村上龍限りなく透明に近いブルー」)

 この間Kに会ったとき「最近は少しずつ長いスパンで物事を考えられるようになってきた」という話をした。お互いにどうやら気の短い人間みたいだけど、ようやく。僕は29で、彼女は28になった。Kとはじめてあったのが何年のことか思い出せない。でも20世紀から21世紀に変わる大晦日に少し会ったはずなので、西暦2000年の夏にはじめて会ったんじゃないかと思う。だとしたら、僕達がイベントのために夏休みのほとんど全部、朝から晩まで机や椅子を作り続けていたのも2000年の夏だったんだろうか。恐ろしいくらいの昔、過去だ。なんて子供だったことだろう。

 年をとるということがどういうことか、昔は良く分からなかった。もちろん今も分からないけれど、昔よりかは過ぎた年月の分だけ分かっているし、50歳になるということがどういうことかは分からないけれど、29歳になるというのがどういうことかは分かる。人によって29歳になるということの意味は違うだろうから、あくまで僕に分かるのは僕なりの29年間生きるということだけれど、それだって単純に人間が29年間生きるということの共通項をいくらかは含んでいるにちがいない。そして、ときどき年を重ねるということはなかなかヘビーなことなのかもしれないなと思う。

 子供の頃、老人を大事にしましょう、おじいさんおばあさんを敬いましょうと言われて、老人は弱いから大事にしなくてはならないのだと思っていた。僕は大事にしなくちゃならないな、と思った。
 でも今は全然違う。この人は僕よりも数十年長く生きていて、戦争すら生き延びたのだと思うと、心の奥から畏敬の念が湧き上がるのを止めることができない。

 外が雨なので、部屋を掃除する。随分前から気にしていたCDを整理する。古いCDがたくさんある。そういえば時代がテープからCDになって初めて買ったCDはハリウッド映画のサントラ集だったけれど、あれはどこへ行ったんだろう。ローリングストーンズだとかハイロウズだとかピストルズだとかTレックスだとか、10年前はこんなのを聞いていたんだなと不思議な気分になる。それとかロクセットとかクラウドベリージャムとかゼイマストビージャイアンツとか、今思えばポップミュージックの入り口だった。自分でコンパイルしたCDとか、まだそんなにCDRが普及していなかったころにはじめて焼いたジャニスジャップリンとか。あの人にもらったCDだとかこの人にもらったCDだとか。あのイベントのCDとか。古いコンパクトディスクを見たとき、これを聞いていた過去の自分と今の自分はほとんど別の人間のような気分になるのは僕だけだろうか。
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