specrtum G2V.

 春の麗らかな日差し、というには幾分強すぎる日差しを浴びて、皮膚がチリチリするのを感じながら、15000万キロメートル彼方に浮かぶ太陽のことを考える。そうだよなあ、いくら遠くにあるからといって、でもそれは直径140万キロメートルの巨大な核融合装置で、僕達はその放射を浴びているわけだから、肌がチリチリ痛いのは当たり前のことだ。太陽が遠くて良かった。本当にうまい具合に地球は配置されているものだと思う。地球の100倍以上大きい直径を持つ核融合に曝されて日々生きているなんて信じられない。

 それにしても、自然光だって僕らが毎日浴びている日光は核融合で作り出された光であって、その言葉の響きは遠くかけ離れているような気分がする。僕達にとって核融合というのが自然の根源なのだ。自然光に近い電灯というのは核融合の光に近い電灯のことだ。

 核の光。

 今は亡き偉大な物理学者リチャード・ファインマンは、はじめて行われた原爆実験のときそれを裸眼で見たと書いていた。なんて無茶な人だろうと思ったけれど、考えて見れば僕達は核の明かりのもとで暮らしているわけだから、そんなに無茶でもなかったのかもしれない。もちろん核分裂核融合では話が違うし、光の強度と周波数にもよるわけだけど。