smoke concentration measurement.

 最近どうにもタバコの煙が苦手だな、と思っていたのですが、考えてみれば最近どころか僕は子供のとき極度にタバコの煙が嫌いだった。両親は共にヘビースモーカーだったので(父はやめると言ってすっぱりやめてしまった)、今思えば家の中は随分タバコ臭かったはずだ。車にも酔うと思っていたけれど、考えてみれば遠足でも修学旅行でも酔わなかったし、僕の家の車が単にタバコ臭かったから吐いたのではないか、と今から思えば思えなくもない。車の中でタバコの煙を吸うのは子供の頃の僕にとって地獄のようなことだったので、「やめてほしい」と言うのだけど、ヘビースモーカーな両親は「本当に神経質な子供だね。窓開けるからそれでいいでしょ」と言って窓を開けてタバコを吸っていた。そして僕はゲロを吐いた。

 大学生になってある日、推理小説の影響で急に僕はタバコが吸ってみたくなり、自動販売機でマルボロを買って吸ってみた。なんの抵抗もなく、むせたりもしないので、吸い込み方が足りないのかと思って思いっきり肺に吸い込んでみたけれど、やっぱり何の抵抗もなかった。これも今から思えば、僕が子供の頃から副流煙をたくさん吸っていたお陰なのではないかと思えなくもない。

 タバコについて長らく不平を溢していた僕がタバコを吸うのを見て両親は吃驚していた。でも、僕は単に推理小説の登場人物がタバコを吸うところが格好良かったので吸い始めただけで、半年も経たないうちに飽きてやめてしまった。
 でも、別にタバコをやめたのはタバコが嫌いになったからではないので、僕の部屋に来た誰かがタバコを吸うことを禁止したりはしなかった。それが今では耐えられない。クラブやバーに行って服に付いたタバコの臭いも耐え難い。いつの間にか、大人になってタバコの臭いに慣れていたはずなのに、また子供の頃みたいにそれを毛嫌いしているのが不思議でしかたない。

 もう一年の後に僕は30歳になるけれど、最近いろいろなことが一回りして、子供の時の自分が強く現れてきているような気がします。仕舞っておいた箱を次々に開けるような、そんな気分です。

 (僕の周囲にいる人でタバコを吸う人はそんなに気にしないでも大丈夫です。そんなに極端なものでもありません。ただ一時期は全然気にならなかったのに不思議なものだ、というくらいのものです。)