Laplace.

 僕は今大きく見ると量子情報処理の分野にいるのですが、大御所の一人にSeth LloydというMITの教授がいます。名前は良く目にするし、論文もちらっと読んだことがあるけれど、最近彼が一般向けの本を書いていることを知ったので、ちょっと読んでみることにしました。"Programming the universe"というタイトルで、副題が"a quantum computer scientist takes on the cosmos"、とありなかなか挑発的です。内容は量子コンピュータに関心のある人なら誰でも知っているようなことがほとんどなので、あまり面白くはないのですが、せっかく買ったからなあ、と思って歯磨きをするときやなんかにパラパラと見ています。

 先日CERNと標準理論の話を書いたときに、Tが、ラプラスの悪魔がついに君臨だね、というようなコメントをくれた。ラプラスの悪魔というのは別に邪悪な何かのことではなくて、「今の宇宙の全状態が分かり、かつ完璧な理論があれば未来永劫宇宙がどうなるのか完全に分かる」という感じのものです。そのときは人類が完全な理論で宇宙の行く末を予測可能になるのに近づきつつあるのかな、と思ったけれど、重要なことを一つ忘れていました。

 その重要なことが、Lloydの本に書かれていました。

 「宇宙を完全にシミュレートするコンピュータを作ると、それは宇宙そのものになる」

 これは何も、人類にも宇宙が作れる、という意見ではなくて、「宇宙のことを完全に予測したければ、宇宙そのものを作ってみるしかない」というなかなか絶望的な意見です。そして、100億年先のことを知りたければ、100億年待つしかない。

 これが本当かどうかは分かりません。
 たしかに、この宇宙全部の情報を記録、あるいは表現する為に必要なビットはこの宇宙全部をもってしてじゃないと与えられない。でもどこかで圧縮できないのかな、とも思います。
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