Maxwell's tartan ribbon.


 この写真に写っている丸い物体は一体何でしょうか?
 昨日、Mちゃんの友人がやっているインスタントな感じのバーに、半分だけMちゃんのお別れ会みたいな感じで集まってお酒を飲んだり話をしたりしました。そこの本棚に「アメリカ人の撮った50年前の日本」という感じのタイトルをつけた写真集があって、僕は何気なくそれを眺めていたのですが、その中の一枚がこの写真です。場所は東京で、キャプションにはただ「東京、ナントカ橋周辺」と書かれているだけでした。この丸い物体にはまるで何の関心も払われていません。ここにアップしたものは僕が暗いバーの中で携帯のカメラで撮った写真の写真なので、いまいち細部が分かりにくいですが、実際の写真にはかなりくっきりと丸い輪郭があります。
 現像や印刷の過程で何かのミスがあったのだ、と考えるのが最も合理的な判断だと思いますが、でもできれば50年前の東京で何か異常なものが写り込んだというストーリーを支持したいと思う。

 そういえば、この写真集には別に大阪に作られた巨大キャバレー「メトロ」の写真も載っていました。収容人数は1000人で、写真からして実に壮大な空間となっています。50年前の写真なのに、まるで未来を見ているようでした。僕達は本当に進化しているのでしょうか。

 ここへ挙げた写真は白黒ですが、この写真集に掲載されている写真はほとんどがカラー写真です。50年前の日本を撮ったカラー写真なんて僕はほとんど見たことがないし、50年前というのは白黒が象徴するように薄暗い時代だったのではないかと思っていたけれど、当然50年前だって世界はカラフルだった。

 50年前でもカラー写真というのはいかにもアメリカっぽいなと思っていると、Oが世界で最初のカラー写真は誰が撮ったのか知っているか?と聞いてきたので、しばらく頭を探ってみた。僕はどこかでそれを聞いたことがあるし、絶対に知っているはずだけれど、思い出すことはできなくてOが答えを教えてくれた。世界で最初にカラー写真を撮った人はマクスウェルです。電磁気学に出てくるマクスウェル方程式のマクスウェル。マクスウェルの悪魔のマクスウェル。科学史上で最も偉大な科学者の一人に確実にカウントされる彼が、なんと1861年に光の三原色を利用してカラー写真を撮影している。1861年といえば今から150年も昔で、大政奉還が1867年だから、日本はまだ江戸時代だった。もうすこしマクスウェルが頑張って写真を広めていたら僕達は江戸の街を写したカラー写真だって見ることができたかもしれない。天才というのは本当に世界を変えるし、時代を超越しているものなのだなと改めて思う。