月。

 ちょうど大文字山の上に月が出ていた。夕暮れがはじまる前の雲がオレンジで空がまだ青いひと時。月と山と雲と、青くオレンジな空の所為で、それから高くを南へ飛んでいくカラス達の所為で、世界の上半分だけを見れば、まるでここは太古の地球か、それともどこか他所の星のようにも思えた。子供向けの科学雑誌に出てくる恐竜時代か、それとも僕達人類が遠い未来に住むかもしれないスペースコロニーの内部を描いたイラストのようだった。
 夕方に、カラス達はみんなして南へ飛んでいく。僕の大学のずっと南、たぶん御所を目指しているんじゃないだろうかと思う。僕はあそこの森の中でカラス達が眠っていることを知っている。

 今年はそんなにきちんと見ていないのですが、大文字ちょっと失敗してましたよね? 大じゃなくて太になっているように見えました。なんかおかしいなって思っていて、それから次の日、昼間の明るい山肌を眺めると、いままでなかった焦げたあとが付いていました。