その街の歩き方について。

2007年8月7日火曜日

 ISOの監査なんかもあって、5時まで研究室にいたあと、東寺国立博物館なんかへ観光に行っていたIと烏丸御池で落ち合う。僕も何か飲みたかったし、Iはとてもお腹が空いたというのでマクドナルドへ入る。ハンバーガーを食べながら「病気になる」という意味合いのスロバキア語だかハンガリー語と「マクドナルド」を掛けたなんとかという言葉を習っていると、窓の外では雨が降り出して、三条通りを人々が駆け抜けたり雨宿りをしたり。
「この奇妙な格好をした女の人は有名なのか?女だよね?」とIが取り出してみせたのは瀬戸内寂聴さんの写った何かの宣伝で、「今日隣にいて変な格好だから気になって仕方なかった」と言う。

 その後、CDショップに行こうと話していると雨が上がったので、ラッキーだなんて行ってマクドナルドを飛び出したけれど、Iが途中で靴屋がある度に靴を見たがるので、靴を見ているとSちゃんと会う時間になる。

 僕たち二人は市役所前で拾ってもらい、Sちゃんの車でYちゃんと僕ら4人して将軍塚へ行く。
 久しぶりに見下ろした京都の夜景は、夕立に洗われたあとで心なしかいつもよりきらきらして見えた。遠く、西の山向こうから一度だけ光が見えて、たぶんそれは亀岡市の花火大会だろうと僕たちは考えた。耳をすませばドンドンという音も聞こえるような気がした。

 Yちゃんはチェコに縁があって、Iの彼女であるBが次に行く予定のチェコの大学に彼氏がいるということで、世界というのはなんて狭いのだろうと思わざるを得ない。僕にとってはつい2年前までハンガリーチェコスロバキアも全部、東欧なんて遠い遠い国の話だったけれど、Bがハンガリーに行ってから急速にすべてが近くなった。

 子供の頃、ハリウッド映画とNHKの海外ドラマばかりで育った僕にとって、当然外国というのはアメリカのことだった。僕は28歳にもなって一度も日本から出たことがないけれど、気がつけば身の回りには色々な国の人がいて、今や確実に僕の世界感は彼ら彼女らによって作られている。それでいつも思うことには、日本人と話しているのとそう違いを感じたことがない。当然だけど世界は広くて、でもつまるところ人間というのはそう大きな差異を持たないのだなと思う。

 そのあと、北山のマタキチでご飯を食べて帰る。


2007年8月8日水曜日

 朝にBとの待ち合わせ場所へ出かけていくIを送り出してから研究室。僕は学力が博士課程の学生だとは信じられないほど低いので、この夏は人並みに追いつこうと思う。それからいつも小説を途中でやめてしまうので、秋口まで嫌になってもコンスタントに物語をつなげていこうと思う。


2007年8月9日木曜日

 昼からWの部屋探しに付き合う。
 出町柳百万遍周辺にアトリエ兼住居といった感じのものを2万円代の家賃で借りたいという。頼みの綱、不動産Nへ行ってみるも、良いものはなかった。見せてもらった部屋は予想以上に朽ちていて、Wは「つげよしはるの世界みたい」と言った。
 僕は日本林業から参加したけれど、Wはすでにその前にも別の不動産をまわっていて既に疲れを見せていた。僕達は百万遍の進進堂でランチをとって、不動産屋の冊子をチェックしながらしばらく休憩していたけれど、はっきりいって2万円台の物件はカタログには載るものではない。「もう私どこ行っていいのかわかんない。いい不動産知らない?」とWが言い、「いや、僕は不動産のことは何にも知らないし」と言おうとしたけれど、そういえば昔Tが「友達に優秀な不動産屋がいる」と言っていたのを思い出して、Tのお店もここからはそう遠くないので行って聞いてみることにした。

 昼食中だったTに、その友人である不動産屋さんに電話をしてもらうと、その不動産屋さんも昼食中だった。「家賃2万円代なんてある?」というTの質問に、電話の向こうでは「きた、2万円台」という反応があったみたいで、でも部屋はいくらかあるようだったので、後から僕達が店舗を訪ねる旨を告げてもらった。

 Wは今日中に部屋を決めたい様子だったし、僕はもしかすると4時半くらいから用事が入るかもしれなかったし、Tもご飯中だったので短い時間でTのお店を出て、不動産Kへ行くと「ああ、Hですね、今呼んで参りますので」ということで、僕たちが一言も言葉を発しないうちにてきぱきとお茶とアンケート用紙が用意された。

 それからHさんに色々と調べてもらって、さらに3箇所ほど車で連れて行ってもらい、Wのなかでは1つ気にいった場所が決まったようだった。
 その後店舗にもどって、Wがどうしようか、ここでいいとは思うんだけど、と煮え切らない態度をとっていると、「じゃあここで契約ということで」と絶妙に強引なタイミングで、さっきまでの飄々さからは計り知れない素早い合わせをHさんが掛けてきて、Wもそのまま契約してしまいそうだったので、この人なかなかやるなあ、と思いながらもそれはそれなのでWに「ちょっと待って、まだ決めたわけじゃないでしょ? 本当にここにするの?」と言うと、「うん、決めるときは決めないと」とWは言い、契約はするすると結ばれた。

 そういう訳で、Wの新しい部屋は無事に見つかり、それは実に感じの良いアパートだったので、僕もWも満足してTとHさんに感謝した。

 そのあと、Tのお店へ行ったときに近所にできたというハワイアンカフェのことを聞いたので、そこへ行ってアイスクリームを食べて、嬉しくなって、また住むことになったアパートを見に行って、アパート周辺を少し探検した。

 奇しくも、アパートの場所は僕達がTのお店へ行く途中に面白い看板を見つけて笑っていたところのほんの目と鼻の先だった。つい数時間前まで、この辺りは僕達にとって全くの他所だったのに、一月後からWが住むことになるなんてなんとも変なことだ。