77.

 鳥が飛ぶのを見ていた。空を飛べるということが、僕には羨ましくて仕方がなかった。そしてあの程度の翼の羽ばたきで、重力に抗い空を自由自在に飛ぶことができるということがやっぱり信じられないなと思った。だけど、僕はこのときちょっとした勘違いをしていた。鳥は「重力に抗って」飛んでいるわけではない、ということに気が付かなかった。

 鳥は重力に抗っているのではなくて、重力を「利用」して飛んでいる。考えてみれば、鳥にしても、それから飛行機にしても、上昇するための機構は持ち合わせているものの、下降するための機構は持っていない。それは当然で、下降したいのなら単に重力に引かれて落下すればわけだ。特別なことは何もしなくていい。
 さらに、体、あるいは機体のどこに重心をとるかということも大切なことで、これはつまり飛行時に重力と揚力が上手に釣り合う必要性を示唆している。

 だから、この世界から、今この瞬間、重力がなくなってしまえば鳥も飛行機もうまく飛べなくなるはずだ。
 彼らは、重力をうまく利用することで重力から逃れた。まるで合気道の初歩みたいだ。


2007年6月6日水曜日

 夕方にトイレの小窓に付ける網戸を作ろうとニックへ行くとバッタリTに会って、そのままあれこれ言いながら商品を物色していると閉店になって帰る。
 帰りにおうむ亭の前で偶然Yちゃんに会う。ついこの間Yちゃんとおうむ亭の話をしていたところなので、その前で会うなんて話ができ過ぎている。
 部屋に戻ってスチロールとメッシュで網戸を作り窓に嵌める。材が余ったのでついでに向かいの部屋のSちゃんの分も作る。お礼にSちゃんがお菓子をくれて、そのまま暫くしゃべっていると12時になる。
 メトロへ行って少しだけTとお酒を飲んだりして帰る。