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 植生や幽霊で有名な深泥池の近くに、深泥池貴船神社という神社があることは知っていた。貴船というのは、どう考えても貴船のことだし、それは深泥池からさらにずっと北へ行った場所にあるわけだから、僕にはどうしてここに「貴船」なんて名前を冠した神社があるのかわからなかった。
 だけど、今日少しだけその理由が分かった気がする。

 僕はここ10年近くの間に何度も引越しをしているけれど、基本的には京都市の北部に住んでいて、だいたいいつも自転車で行くことのできる距離に深泥池はあった。ただ、僕はその類希なる自然環境にも幽霊にもそんなに興味がなかったので、いつも池の隣を通り抜けるだけで、特に深泥池について調べたこともなかった。積極的にこの池に関わったのは、大学1年の夏、先輩達に夜中の肝試しで一度連れて行かれたときくらいだ。

 10年が経過して、僕は今日ようやく深泥池にまつわる伝説を知った。
 
 伝説によれば、その昔、深泥池には穴があり、その穴は貴船まで通じていた。貴船に住んでいた鬼達はその穴を通じて京都の町にやってきては悪さを繰り返す。ある人が鬼の穴を見つけて、そこに鬼の嫌いな炒った豆を投げ込み鬼を退治した。
 そう、節分の豆撒きのオリジンです。

 豆を投げ込んだあと、穴の上には『豆塚』という塚が立てられ、ついてに豆を入れていた枡を捨てたところにも『枡塚』が築かれましたが、昭和にそれらは失われ、今ではそれがどこに立っていたのか知る人はないらしい。

 深泥池は貴船に関連があった。
 本当に鬼の通った穴が、洞窟があるのかどうかは分からない。たぶんそんな穴は開いていないだろう。鬼という概念はもともと中国から入ってきたものだが、本場の中国では実体のある何かではなくて、むしろスピリチュアルな”気”に近い概念だった。ただ、風水を見ても分かるように気の流れと水の流れは密な関係を持っているので、貴船-深泥池という水脈ラインが考えられなくもない。

 もちろん、本当に洞窟があればいいのだけど。
 近所だし、ちょっと探してみようと思います。豆塚、あるいは鬼の通った穴。夏だし、近所だし、こういうことは子供の頃の少年探偵団以来だけど、かつて鬼が出入りしたという穴を探すことは僕にとってはとてもワクワクすることだ。

 なので、もしも深泥池と豆塚、鬼に関する情報をお持ちの方がいらしたら、教えていただけるととても嬉しいです。僕のアドレスは自己紹介欄にもありますが、 Ryota.Yokoiwa@gmail.com です。