electronic.

 頭痛がするくらい疲れ果てた状態に、喉が渇いたといってカリフォルニアビールとリンゴがうんと入ったサングリアをがぶがぶ飲んで、僕の体はいくらかふわふわとしていた。ヘッドホンを着けて、自転車に跨る。深夜を過ぎた通りにはほとんど車もなく、遠く南、太平洋で発生した台風が街路樹に強い風を送り込んでいた。揺れる木々の中で、どうやって鳥たちは眠っているのだろう。
 通りは進行方向へ向かって、緩やかに下っている。だから僕はあまりペダルを踏む必要がない。ヘッドホンからはコーネリアスが大音量で鳴り響いていた。通りに自動車もなく、人通りもなく、主に透明な高音で作られた音楽が耳元で鳴り響き、台風の風を受け、いくらかアルコールが体内を駆け巡り、僕は今なら車にひかれても全然痛くなさそうだな、と思う。自転車はまるでオートマティックに進み。僕はそこに乗っかっているだけだ。風は背中を押し、僕は然るべきところへ運ばれていく。

 危ない危ない。
 こんなことをしていては本当にひかれて死んでしまうかもしれない。

 僕はヘッドホンを外した。
 ときどきはこんな感じで死んでしまう人もいるのかもしれませんね。

 しばらくすると軽い雨が降ってきたので、立ちこぎなんてして急いで部屋へ戻って、やっぱり喉がかわいたなあ、と冷蔵庫を開けると冷やし飴が入っていたので、ごくごくと飲んで、藤原定家の歌集を読んでいるといつの間にか眠っていて、Eからの電話で起きて、いくらか話をしてまた眠った。
 開け放した窓の外では、相変わらず強い風が音を立てていて、干したままの洗濯物がこれでもかと翻弄されていた。