素敵なボーイズ、アメリカへ行く。

 僕はこのところインフルエンザに罹っていて、すっかりと寝込んでいるのですが、今朝は随分と調子がいいので、ここ暫く書きたかったことをライトなものから書いていこうと思う。

 さて、僕の目の前にはミスタードーナツの紙袋があります。昨日の夜、I君とT君が大量の食べ物を差し入れてくれた中の一つで(ほんとうにものすごくありがとう)、紙袋には3つのドーナツが収まっていました。きな粉ドーナツ(きっともっと正確でファンシーな名前があるんだろうけど僕は知らない)とチュロスは貰ってすぐに食べて、残っていたイチゴドーナツ(これも本当の名前は知らない)をさっき僕はむしゃむしゃと食べて、食べながらぼんやりとそのドーナツの袋を眺めていました。

 そしてひっくり返りそうになった。

 このドーナツの袋は、一見すると比較的丁寧にデザインされているように思えます。全体の色使いも写真の配置もフォントも。キャラクターの使い方もイメージ自体は小さい訳ではないけれど主張は抑え目で、頬にはドーナツのくずまで付ける念の入れ様です。それに応じてか、ドーナツ自体の写真も適度にしずる感を抑えた「ややキャラクター的」なものになっています。そして結果的に子供じみてはいないけれどややファンシーといういかにもドーナツ屋さんのいるべきポジションを獲得しています。

 と、ここまで書いて思ったのですが、僕がひっくり返りそうになったのは「袋を見て」、ではなく正確には「袋に張られたテープを見て」なので、袋は誉めるだけ誉めて終わりです(一点だけ誰も気にしないようなことに後で触れますが)。

 そのテープというのは、もちろん折り曲げて袋を綴じて、それをぺたりと止めるテープなのですが、例によってミスタードーナツのテープにも何やら言葉が書かれていて

 ”THANKS you beautiful people, mister donut

というわけです。僕は英語は不出来だし、ネイティブが持つような語感やニュアンスについては全く知識がありませんが、僕になりにこの一文を読み直してみました。
 thanksというのは「サンキューのより砕けた言い方」か「感謝(名詞)」のどちらかだと考えられますが、普通に考えると前者ですよね。「感謝」って急に名詞で書かれても中国ならいいのかもしれないけれど僕たち日本人にはなんか変だ。

 だから、訳は

「ありがとね。君らって素敵だよ ― ミスタードーナツ

 念のため「感謝」の方も書いてみれば

「感謝。君達素敵 ― ミスタードーナツ

 のどちらかということになるのではないでしょうか。

 どちらにしてもなんか客を舐めた態度ですね。素敵だっていうのもドーナツ買ったから素敵なわけですし。
 それでは、どれくらい客を舐めているのか、と思いきや、そのテープのすぐ上には袋自体にこう印刷されています。

「涼しいところで保管して、お早めにお召し上がりください。」

 なんだ、丁寧な言葉使いもやればできるんだ。しかし、ちょっとギャップが大きすぎやしないだろうか。ありがとね。君らって素敵だよ。お早めにお召し上がり下さい。どちらがミスタードーナツの本心なんだろう。署名が入っている分「ありがとね」の方に分配はあるかもしれない。

 僕はもう少し袋をクルクル回してみた。

「*強くこすったりすると、印刷の色が服などにつくこともあります。」

 なるほど、これでミスタードーナツの本心が分かった。この「印刷が服に付いちゃいますよ、気を付けて下さい」はよく書いてあるけれどミスターのものは一味違う。「つくこともあります」っておかしいですよね。普通「つくことがあります」って書きませんか。「つくこともあります」ってなんか投げやりな「そういうこともあるらしいけど、まあ運が悪かったってことだ」みたいなニュアンスが僕には感じられて仕方ありません。

 ミスタードーナツってクールだ。
 早く春がやってきて、どこかの公園や川原でぼろぼろとくずをこぼしながらドーナツを食べれるといいなと思う。