レインボー・ビルディング。

 今日は京都文化博物館へ、柳宗悦となんとか、という民芸関係の企画展を見に行った。
 実を言うと僕は「民芸」というものがあまり好きではない、どちらかというと嫌いだしほとんど興味もない。では、なぜそのような展覧会を訪れたのかというと、それは正月に実家で柳宗悦の本を見付けたせいです。
 僕は柳宗悦や日本の民芸運動に関して、大学に入るまで何も知らなかった。だけど実家に帰って自分の本棚を物色していると、そこには柳宗悦の本が一冊納まっていた。どうやら僕は彼の本を高校生の頃に読んでいて、でもすっかりとそんなことは忘れていたようなのです。僕はそのあまりにクリアな忘却具合に驚いて、もう一度読んでみようと思いその本を実家からアパートに持って来ました。そうして、街に出ると柳宗悦の展覧会をするとポスターが張ってあったわけです。これはもう行くしかない。僕は偶然にはなるべく乗っかってみることにしている。

 結局、僕はその展覧会ではすぐに目に見える成果を得ることはなかった。やっぱり退屈だった。たぶん全然面白くないだろうと踏んでいたので、誰も誘わずに一人で行って、そのせいで余計に退屈だった。変な顔の鳥を描いた屏風があって、僕は本当は笑いたかったけれど人前で一人で笑い出す訳にもいかない。

 博物館を切り上げて、そのあと僕は電気屋へボイスレコーダーを買いに行った。そうするとボイスレコーダーの値段は大体1、2万円で、隣りに並んでいるMP3プレーヤーも同じ価格帯だった。そしてMP3プレーヤーにはボイスレコーダー機能が大抵付いていた。ならばMP3プレーヤーの方が音楽も聴けて、声も録音できて、ラジオも聞けて、しかも小さくてずっといい。ただ、マイクがどれくらい音を拾うのか心配だったので、絶対に知らないだろうなと思いつつ店員に聞くと、やっぱり知らないということで、僕は似たような機械を持っているMに電話をしてみた。やっぱり頼りになる彼は「まあ十分使えるよ。バンドの音もときどきとってみるけど別に聞ける」と返事をくれて、そして僕はMP3プレーヤーを買った。

 最近、パソコンの中の音楽環境が変ってきて、ちょうどMP3プレーヤーが欲しくなってきていたので、この買い物は僕にとって一挙両得だった。今まで携帯用の音楽プレーヤーはi-pod(shaffle)を使っていたのですが、i-tunesをほとんど使わなくなり最近では不便を感じていた。わざわざシャッフルの中身を入れ替える為だけにi-tunesを起動していました。それに人のパソコンから音楽を取り込もうとするとi-podから元のデータが消されるし、コピーライトのせいだかなんだか知らないけれど、データのコピーが簡単にできなかった。
 でも、MP3プレーヤーならそのままMP3のフォルダを放り込むだけなのでとても楽だ。専用のソフトもいらないし、データのやり取りも簡単にできる。i-podは革命的な存在で、ものすごい勢いで売れているし、それは世界をすこし変えた。でも、今となってはデザイン以外にi-podのメリットはほとんどないように見えるし、それどころか限定されたアップルワールドに消費者を閉じ込めようという意図を感じてしまう。

 電気屋を出てしばらく行くと、Oにばったり出会った。そのあと、本屋に立ち寄るとI君に出くわした。さらにI君と歩いているとMちゃんにも会った。わずか3,40分の間に偶然3人の知人と遭うなんて変な日だ。

 それで、I君とも話をしたのですが、僕たちはビルを一つ借りようと思います。1階をサロンにして、その上の階で暮らして、屋上では洗濯物を干したりビールを飲んだりするつもりです。大きなビルならみんなで住める。
 といっても、もちろんお金なんてないので、廃虚みたいなビルや空き家のまま放置されているビルをしばらく探してみて、持ち主を探して話をしてみようと思う。だから、もしもそのようなビルを知っている人があれば教えて下さい。よろしくお願いします。


南無阿弥陀仏―付・心偈

岩波書店

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