こんばんはサニー。

 何日か前の日記「レコード」ですが、最後の引用文について何件か問い合わせがあったのでここに書いておきます。

 ジェイク&サマーボーイズの歌からの引用だとなっていますが、ジェイク&サマーボーイズというのは僕の頭の中にだけ存在している架空のバンドで、実際にはそんな名前のバンドはありません(僕の知る限り)。だから、グーグルで検索に掛けたりして調べて下さった方には申し訳なく思います。紛らわしいことを書いてすみませんでした。全く僕の創作です。

 もう今度こそ駄目になったかと思ったバイクを、ずっと放置していたのですが、先日家の前でしばらく人を待つ必要があり、暇だったのでキックしてみるとエンジンがかかって吃驚した。廃車にしなくて良かった。ときどき時間は強力に物事を解決する。決断を急がないで保留することも大事だと思う。保留しておくというのはとても気持ち悪い状態だけど、それに耐えることもたまには求められる。

 しばらく前に、養老孟司が「どうして日本ではこんなに漫画が読まれるのか」を論じた本を立ち読みした。そこにはとても面白い説が立てられていて、曰く「日本人は漢字を使うからだ」。
 漢字は日本のオリジナルではなくて、もともと中国のものだから、当然中国人にだってこれは言えるのだろうけど、使っている言語が「表音文字」によって記述されるのか、それとも「表意文字」によって記述されるのかで、言語使用における脳の使い方、あるいは使用部位というのは異なるそうです。

 僕たちは漢字を読みながら、その形から「音」と「意味」を両方同時に受け取っている。対して、表音文字では一つの文字から「音」だけを受け取る。漢字を読むとき、人は脳の2個所を活性化させ、アルファベットを読むときは1個所だけらしい。

 この本のアイデアで面白いところは、漫画の一コマを一つの漢字だと見なすことにある。
 漫画を読むときに僕たちがコマから受け取るものは「意味」と「音」の両方だ。コマに描かれた絵から意味を読み出すことは、漢字の形を見て意味をとることに対応する。同時に、コマに描き込まれた擬音後や台詞からそのシーンの「音」を拾う。これは漢字の音をとることに対応している。

 こういうややこしい作業を、漢字圏の人間は簡単にこなすけれど、アルファベット圏の人間にはちょっと負担が大きくて、彼らは普段音を拾うことしかしないので、日本人や中国人ほどすらすらと漫画を読むことができないのではないか、という意見です。

 という話をCさんにしていたら、「そういえば海外って字幕の映画少なくて、ほとんど吹き替えになってるけど」という意見を貰った。

 僕は表音文字の読者が、いちいちアルファベットを拾って、音に変えて、それから意味をとるのかどうかを知りません。もしかしたら、dog なら dog 一塊で形として捉えているのではないかと考えることもできるので、僕は今回の養老氏の意見に素直に頷くことはできない。

 でも、漢字と漫画をリンクさせた、そのアナロジーをとても面白いと思う。そもそも僕はどうして日本人はこんなに漫画を読むのか、という問いすら立てたことがない。あっても、単に日本人は漫画が好きで、優れた漫画が多いから、というような答えしか出せないし、ちょっと考えれば分かることだけど、これは全く答えになっていない。最初の問いの問い方を変えただけで、ポストモダンに生きる人間としてはお粗末この上ない。それなら僕は「どうして日本人は漫画が好きなのか」という問いに答えなくてはならないのだ。歴史には理由がある。