山の中で松明を眺めながら雨に濡れること。

 22日は鞍馬の火祭に行った。

 この日の日記を書く前に、僕は来年から火祭に行く人の為にいくらか有用だと思える情報を載せて置こうと思う。というのも、僕たちは今回ほとんど有用な情報を持たないまま火祭に行って、それなりに苦労をしたのですが、体験した今となっては全容がぼんやりとは分かりますし、こういうことを先に知っていればこうしたのにな、と思うこともいくらかあるからです。
 火祭にいく予定でない人は飛ばして読んで下さい。
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 まず、電車で行く場合は叡山電鉄出町柳から乗ることになりますが、僕たちが駅に集合した夕方5時にはすでに物凄い行列ができていて、電車に乗るのは3時間その列に並んでからという有様でした。それから、僕たちは遅れて来る人を待ったり、結局6時過ぎまで出町柳にいたのですが、その頃になると「今から並んでも鞍馬まで行けるかどうかは分かりません。というか無理なんじゃないかと思う」というアナウンスが出ていて、つまり、夕方から電車に乗って火祭に行くというのは絶対に止めた方がいいと思います。
 ただ、午前中やお昼に出ることのできる人ならば、電車で早い時間に鞍馬入りを済ませる、というのも一つの手ではないかと思います。帰りの電車のことを当初僕たちも気にしていたのですが、祭の最後の方になると電車は結構すいていました。だから、終りまで祭りを見るのであれば、帰りのことはそんなに心配しなくても良いのではないかと思います。
 つまり、電車は早く行って遅く帰るのであれば、とても有効な手段だと思われます。

 次に自転車、バイクですが、バイクがあるならばバイクがベストの交通手段だと思います。駐輪場もあります。満車になっても、その辺に停めることができます。
 僕たちは結局、自転車で行きましたが、恐れることはありません、出町柳から鞍馬までだいたい1時間半もあれば十分に行けます。行きは登りが多いので多少堪えますが、そんなに過酷なことはありません。女の子でもまあ大丈夫です。残念ながら先日はひどい雨でしたが、帰りは下りなので天気がよければ快適この上ないと思います。
 だから、天候が良ければ自転車もバイクもとても有効な手段です。人込みに揉まれて電車を待っている間にささっと鞍馬に到着することが可能です。

 あと、タクシーという手ももちろん考えたのですが、MKに電話すると渋滞が激しいからタクシーは止めた方がいい、と言われました。それを信じて僕たちは自転車を採ったわけですが、実際に行って見ると渋滞なんてどこにもなかったですし、交通規制の引かれている手前までタクシーで行ってあとは歩くという手も十分に賢いと思います。

 車で行くのは、停めるところがないのでやっぱりマナー違反ですよね。
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 と、長い前置きになったけれど、とにかく僕は22日にみんなと鞍馬の火祭に行ってきた。
 当初、僕たちは頑張って電車で行くつもりだったので、5時に出町柳に集合ということにしていて、そして五時に駅へ行ってみると信じられないくらい沢山の人々で出町柳はごった返していた。先にYちゃんとCちゃんが待っていてくれて、Cちゃん情報によると「電車に乗るの3時間待ちだって」ということだったので、即座に電車で鞍馬に行くのはやめにした。

 それからしばらく、みんなを待っていると僕のところに変な外国人のカップル(?)がやってきて、カメラを見せるので写真を撮って欲しいのかと思ったら、そうではなくて僕の写真を撮りたいということだったのでオーケーして撮らせてあげた。何度かモデルをしたり、街角スナップを撮られたことがあるけれど、いつだって写真を撮られるのは緊張する。昔、某誌の撮影で一緒にスタジオに入った女の子は緊張で撮影後に吐いていた。

 結局、僕たちは電車をやめにして自転車で鞍馬を目指すことにしたのだけど、yちゃんは「自転車でいくなんてとんでもない」というおばちゃんからのストップが掛って断念。それで、僕らは8人になってしまった。はるばる京阪で出て来てくれたyちゃんに申し訳なく思う。やっぱり下調べはきちんとやらなくてはいけない。
 出町柳から、深泥ヶ池、精華大学を抜けて、鞍馬までは結構あっさりと辿り着いたと思う。MKの人が言うような渋滞なんてどこにもなかった。比較的快適なサイクリング。

 駐輪場が一杯だったので、橋のところに自転車を止めて、それからは徒歩で鞍馬まで20分弱。
 道路を挟む家々の前にかがり火が出ていて、だんだんと幻想空間ムードが現れる。

 お酒を買ったり、とん汁を買ったりしてからバイク組のM君、Sちゃん、Mさんと合流したけれど、Kさんは論文を書かなくてはならないので先に帰ってしまった。
 だんだん人工密度が増してきて、次第にみんなとはぐれるようになる。別にバイクで来ていたAちゃん達にも結局会えなかった。

 祭自体は、ほとんど火を掲げて歩くだけというものだけど、鞍馬の山奥で「サイレイ、サイリョウ」という掛け声と共に燃える炎には民俗学的な力が大きく潜んでいた。僕たちが日常の中で守っているのとは次元の異なるルールに従うこと。たくさんの人間が山奥で炎と共にあり、心もオープンになっているということ。ハレとケについて、僕は再び考える。人間というのは科学的合理性の枠を超えたものを信じることを決して嫌わない。僕たちは科学ではなく物語りの中で生きている。

 Cちゃんと二人になって、神輿を待っていると後ろから誰かに肩を叩かれて、振り返るとTくんで、みんなすぐ後ろの店のなかで何かを食べていた。はぐれても意外とすぐに会えるものだなと思う。
 鞍馬寺にお参りすると、木の上に何かがいた。ムササビのように僕には見えた。

 祭の終盤から降り出した雨は、火祭の残り火を鎮火させる為に降っているようだった。鞍馬の天狗の仕業だろう、僕たちはこの雨にひどくやられたけれど、この雨が無くては何処かで火事が出たのではないかと、密かに僕は思っている。火祭の後に水があるというのは、それはそれで美しいことでもある。
 
 とはいうものの、雨で僕たちは身動きが取れなくなった。雨具は決定的に足りないし、雨は一向に止む気配を見せない。タクシーで帰って、後日また自転車は取りにくれば良いのではないか、という意見もあったけれど、僕はその辺の家から傘を貰って来てしまい、結局そのままひどい雨風の中を強行的に帰ることにしてしまった。結果としては、全員ずぶ濡れになり、挙げ句の果てにはYちゃんに風邪をもたらしてしまって、随分反省しています。危険な選択だった。この日は山だったし、雨も降った。バイクのAちゃんは帰りに転倒してミラーを折っていた。そういえばMくんもこの日はミラーを折っていた。

 家に帰ってから、シャワーを浴びて、パスタを茹でて食べた。