まるで遠い麦の畑。

 日曜日、僕は買い物に出掛けた。服を買って、CDを聞いて、それから雑貨屋でシリアルを入れる大きなボトルを見付けて、それを買おうかどうか迷っていた。ばかでかいコーヒーメーカーみたいなシリアルやゼリービーンズを入れるボトル。お皿をあてがって、摘みを捻ればザザーっとシリアルが出てくる。これさえあれば朝御飯もばっちりさ、というような素敵な品物。

 そのシリアル入れを子細に点検していると、M君から電話が掛かってきて、僕は急遽、西部講堂に出掛けることになった。インターナショナルでトライバルなイベントが行われているらしく、友達のKさんもカポエラでステージに上がるということだ。

 僕はKを誘って、それから西部講堂に向かった。
 西部講堂には色々な国の屋台が出ていて、民族音楽のステージがあって、火が焚かれ、まるで一個の村みたいになっていた。この夏に山水人のゴア・ギルのレイブに出掛けてから「村を作りたい。みんなで山に住もう」というのが口癖のようになっている僕はここに来て再び感化される。

 屋台の中には、山水人でもお世話になったカイラスカフェもあって、僕はそこでKとお茶を飲んだ。
ステージからはサンバが聞こえていた。僕はまた、夏の山水人に戻ったような錯覚を覚えた。でも、もちろん、ここは朽木の山奥ではなくて京都の真ん中で、そして僕はタンクトップではなくて長袖を着ている。夏は確実に終わったのだ。

 お祭りが終わり、みんなと少し話をして解散した。
 鞍馬の火祭の話と、それからハロウィンの仮装の話をいくらか。

 そうだ、時間を少し戻そう。

 この日の夕方、僕は宣戦布告した。なぜなら、それはとても汚い街だったから。ゴーディは言った「どうして人は死ぬんだ、どうしてだ」。彼は兄を自動車事故で失ったのだ。クリスは黙って彼を抱きかかえる他なかった。70年なら一瞬の夢さ。自然の摂理なんて認めやしない。人類は不老不死を目指す。1000年咲き続けた花を、まだ枯らせはしない。けして儚くはないのに美しい花を僕は美しいというだろう。たった一人きりの君だから好きなんじゃないんだ、僕は君がこの世界に1万人いたって君のことが好きだと思う。犬が追いかけてきたら、止まってミルクをあげようと思う。

 遠くで花火の音がする。