オイル。

 木曜日。
 朝からデバイスの講義で発表だったけれど、恙無く終わる。
 
 夕方に映画を観に行く予定が流れたので、もう売ってないだろうなと思いながらホワイトバンドを買いに行ったけれど、やっぱり売っていない、本屋で次の入荷は10日くらい、と言われ、タワレコでは12日と言われた。
 本屋で僕は「shall we dance?」の周防正行監督が書いた、”「shall we dance?」アメリカへ行く”、という本を買った。正直に言うと、僕は自分がその本の一体何に惹かれたのか良く分からなかった。半分、ポケットに入れて持ち歩く文庫本を切らせていたので、その補充として単に買ったという感じだった。
 shall we dance? という映画は一度見たことがある。
 なかなか面白い映画だった。でも、特別に好きで、そして周防監督に特別な関心を抱いた、というようなことはなかった。
 でも、僕は彼の本を買った。アメリカへの宣伝ツアーのことが書かれた、半分は旅日記のような本だったから買ったのかもしれない。と、最初僕は思っていた。だけど、特別な興味がないと思っていたその本はとても面白くて、僕は周防監督をとても好きになった。彼は、とてもラディカルで、自己に関しても世界に関しても俯瞰的な見方のできる人だった。そして、文章が村上春樹ばりにうまかった。

 タワレコでは久し振りにCDを買った。free desighの曲を色々な人がリミックスしたアルバムを、参加アーティストにベル&セバスチャンのなんとかさんが入っていたので買った。
 そんなに素敵なアルバムという訳ではなかった。

 金曜日。

 応用光学特論で聞いた、光ファイバージャイロのことが何故か頭を離れない。どこかに引っかかっているのにどこに引っかかっているのか自分では分からない。とても良くできた装置だと思う。
 先日、アメンボには縄張りがあるということを知ったので、中庭の池でI君とアメンボを観察してみたけれど、いまいちテリトリーや法則が見えない。

 夕方にI君と川端のニックへ行って、野外パーティーの準備第一段。発電機を載せる台車や電源ケーブルや電球なんかを買う。
 その帰りに出町の鴨川公園を視察。
 一端、僕のアパートに戻り、発電機を台車に載せてガソリンスタンドへ行って給油。その後、T君も合流して、高野川で試運転も、オイル切れの為すぐにエンジンが止まり、僕はバイクのオイルを取りに帰って、3人で暗闇の中、発電機を傾けて無理矢理オイルを流し込む。そうしてヤフオクで買った発電機はうるさいけれど完璧に動くことが分かって一安心。

 発電機を研究室に置こうかと思ったけれど、大学のエレベーターに乗せた時点でいかにもガソリン臭かったので断念して、僕のアパートの廊下に持って帰る。

 その後、三人で”のはら”へ行く。
 営業時間は8時半までで、僕らが行ったときはすでに9時を回っていたけれど、「いいよ、いいよ」といって入れてもらい、10時まで滞在する。

 その後、僕はMのところでマンゴーココナッツアイスとオレンジアイスを食べながら三谷幸喜の「笑の大学」を観る(本当は69をもう一度見たかったけれどなかった)。
 僕が借りて行った映画だけど、これはもちろん役所コウジが出ているから借りた。周防監督の本を読んでいて、僕は彼を単に役者としてだけでなく、人間としてとても尊敬している、というようなことが書いてあったせい。
 でも、映画自体はそんなに面白くなかった。
 三谷さんは昔、金子達二さんか誰かのインタビューに答えて、「笑いを理詰めで考えていく」というようなことをおっしゃっていたけれど、それを体現したような映画だった。
 この日、僕は多分現代で海の写る映画を、本当は見たかったのだと思う。