ジンジャーエールを飲む100の方法

 朝起きて、ジンジャーエールをコップに一杯飲み干した。
 喉がチクチクするのを我慢して、ゴクゴクと飲み込んだ。

 それからCDプレーヤーに入りっぱなしになっていたフリッパーズギターを回転させて、洗濯機も回転させた。

 「線路を歩き、ジンジャーエールを飲む」

 と小山田圭吾は歌い始めた。

 「 what a nice day for a picnic
what a nice day to be happy like a honeybee ! 」

 甘々な歌詞が甘々なメロディーに乗り、僕はチョコレートまで齧りそうになった。

 そのとき、ミック・ジョーンズとジョー・ストラマーが言った。
 もしかしたら、ジョン・ロットンとシド・ヴィシャスだったかもしれないし、そうではないかもしれない。誰の声かはっきりしなかった。でも、とにかく声は言ったのだ。

 ノー フューチャー!

 それは日本語の発音だった。
 もしかしたら、言ったのはどのパンクロッカーでもなく17歳の時の僕だったのかもしれない。

 「いいや」

 僕は気にせずチョコレートを齧った。コルゲートで磨けば虫歯にはならないさ。

 ノーフューチャーでベルリンの壁チェルノブイリであれもほしいこれもほしいだろ
 3コードで唾はいてボロボロの服でベース弾けなくて演奏は下手なほど真実味があって
 ギターは叩き壊してヘロインでコカインでピスでぐるぐる腕振り回して切れて血だすだろ?

 ピピピと音がして、洗濯機は脱水を終えた。 

 「いいや、僕はもうセブンコードだって押さえられるんだよ」

 まずは真っ白のシャツから干す事にした。