時間とは私であり時間ではないということ

無限に広がるニュートン的な宇宙と、十分な分子、原子ないしは素粒子の存在、あるいはエネルギーの存在を仮定する。 この時、無限個の粒子が取りうる状態数は無限個存在し、つまりどんなに低い確率でしか起こり得ないことであっても、どこかで起こる。その帰…

食べ物を支える死のこと

家の近所に小さな映画館と、併設された小さなカフェがある。小さな映画館では鑑賞中に小さなカフェの食べ物を食べることもできる。この映画館は逗子では唯一の映画館だ。かつてこの町がレジャー客で溢れかえっていた頃には、いくつかの映画館があったという…

デビルズリングと玄妙なる眠り

デビルズリングと彼は呼んでいた、と思う。それは至ってシンプルなパーティーゲームで必要なのは二人の人間と二本の紐だけ。まず一本の紐を一人目の左手首に結びつける。それから、右手首にも。そうするとちょうど両腕が輪っかのように繋がる。続いてもう一…

逗子から都内へ通勤すること

逗子から東京都内まで、実際に2ヶ月通勤してみた実情を書きたいと思う。 僕自身、引っ越すに当たっていくつかの「逗子ー都内通勤」記事を参考にしたし、そういうウェブ上の情報がなければ引っ越しはしていないと思う。 逗子駅では都内に向かう電車が4両増…

逗子で暮らし始めたこと

井の頭線下北沢駅のホームは道路に近いこじんまりとしたもので、まるで路面電車かのようにさっと乗車できる。急行に乗れば次の駅はもう渋谷で、その間たったの4、5分だから、感覚的には家にいて誰かに呼ばれれば10分から15分後には渋谷にいるという感じだ。…

「逃げる」なんてない

「逃げる」という言葉について、子供が書いた詩のようなものがfacebookのタイムラインに流れてきた。野生動物は逃げることで生き延びているのに、人間はどうして逃げてはいけないのか、という感じの内容だった。そうだ、人間だって逃げてもいいんだという大…

豆苗専用トレーを作りました。

ときどき村上農園の豆苗を買って食べているのですが、トレーに入れて水をあげると再収穫が可能だということでテックショップの機材を使って専用のトレーを作成しました。 トレーの素材はPETで最終的には真空成型機を使っています。 まずは真空成型機に掛ける…

シェア工房が開く移動生活時代の一端について

2010年代は、後に「人々が場所や物への固執を辞めて移動し始める準備期間」という風に評価されるのではないかと思う。LCCが世界中を飛び回り、AirBnBやシェアオフィスやuberやカーシェアリングが現地で必要になるインフラを提供してくれる。そういう時代…

革命としてのFusion360

IT革命、なんてもうとっくの昔に死んだ言葉だろうか。革命という言葉には「物凄く急激な」というイメージがあって、その「急激」の度合いは視座の取り方によって変わってしまうから、たとえば10年とか20年で起こった変化のことを「革命」と感じるのは、…

循環する有機物とバスルームの羽虫

排水口の周りなんかで時々見かける、小さな羽虫がいる。丸いような三角のような形の灰色のやつだ。この虫の名前はチョウバエと言って、水周りを放っておいて汚泥のようなものが溜まってくるとそこに発生する。新しい部屋に引っ越したとき、お風呂が変な設計…

動的なIoT、静的なIoT;人工知能とチップを埋めないIoT

今日、IoTのことが話題に登って、そんなに話をしている暇はなかったのだけど、最近IoTについて自分がどう思っているのかが少しまとまった気がする。 IoTのちょっと未来を考える時、真っ先に頭に浮かぶのはアマゾンがシアトルに作るだか作ったかだかのコンビ…

世界中の家:タイムマシンを呼んだこと。

はじめて絶望したのは小学生のときで、小学生には無限の可能性がありそうなものだけど、絶対にできないことがあると気が付いた。 それは「世の中にある全ての家の中を見る」ということだ。 新しい友達なんかができて、家に遊びに行くのがとても楽しかった。…

定住時代の終わり;HOUSEから「ubiquitous bNs」へ

トレーラーハウスを買おうと思っているという話を聞いたのと、物件を見に久しぶりに不動産屋へ行ったのが合わさり、住む場所について色々考えたり思い出したりしている。 僕は今のところは賃貸で物件を借りて1年とか2年、普通にそこへ帰る生活をしているけ…

この世界の無限の計算量

よく覚えていないので間違えているかもしれないけれど、たぶん大江健三郎がどこかに子供時代の思い出を書いていた。学校でドキュメンタリー映画みたいなものを見る機会があって、その中に樹の枝や葉がアップで撮られたシーンがあった。画面の中で枝や葉が大…

スケール

本屋をウロウロしていると、ポリアという多分昔の数学者の書いた「いかにして問題を解くか」という本が平積みになっていて、その隣の隣に、「いかにして問題を解くか」をざっとまとめましたみたいな本があった。その本は僕が20歳くらいのときにたまに読ん…

Ruby:p

もしも今プログラミング言語を1つ学ぶならPythonがいいなと思っているのだけど、ちょっと理由があってRubyの勉強を始めた。 僕のプログラミング経験は非常に限られていて、今までに触れた言語はCとFortranのみだ。それもCは大学に入った頃、20年近く前に…

カロリーメイトアンバサダーミーティング;コピー:ロゴ。

こういったカロリーメイト専用のホルダーも作っているし、こういうエントリーも書いているし、周囲の人にはときどきカロリーメイトの話をするので、僕がカロリーメイトを好むことを知っている人は知っていると思います。最近カロリーメイトアンバサダーにな…

「君の名は」:社会の疲弊とフィクション

何でもない家の前に女の子が1人立っている。彼女は満面に笑みを浮かべていて、その理由は分かる人には写真を見るだけで分かる。家の作りからすると、写真が撮られたのはアメリカのどこかの住宅街で、幸いなことに背後の空は抜けるように晴れている。そうか…

FAB12,深セン: その3

8月10日。 雷雨の音で目が覚めた。起床予定時刻より30分早い。まあいいかとそのまま起きて、窓から雨の町並みを眺めた。通りに人は少なく、まだ車もそれほど走っていない。雨は結構な強さだったが、あちこちをビニルで覆ってパラソルのような屋根を付け…

コーヒーと常識

50日くらいコーヒーを飲んでいない。やめたのかと聞かれたら、やめたわけではないが欲しくなくなった。小説を書いたりするときに、ときどき行くお気に入りのカフェが家の近所にあって、そこは値段が高いこともあってスタバとかマクドナルドみたいに高校生…

FAB12, 深セン:その2

8月9日。朝9時にシェラトンへ。 基本的に午前中は色々なプレゼンテーションを聞いて、午後はワークショップ、夜はパーティーというスケジュールになっている。 この日、午前中のプレゼンテーションで、Fab2.0というものが宣言された。プレゼンターはFabLa…

FAB12, 深セン:その1

2016年8月8日から15日までの1週間、中国の深センに滞在した。FAB12という年に一度開催されるFabLab世界会議に参加する為だ。FabLabというのは、3Dプリンタをはじめとしたデジタル工作機器から金槌のような道具までを備えた工房のようなもので、世界…

台湾旅行記2:歴史と輪郭と現在

「二十歳まで日本人でした」と彼女は言った。70年という長い時間が経過して、20歳の女の子は90歳を過ぎたおばあさんになり、そして僕の隣に座って食堂の説明をしてくれている。70年という時間の重みを忘れさせる程、日本語は流暢だった。「向こうも…

NEXUS5バッテリーマウント作成

fab

まったくもってダサいのですが、NEXUS5のバッテリーマウントのようなものを作りました。 僕はSIMフリーのNEXUS5を使っていて、古い所為もありバッテリーの持ちが良くない。バッテリーを交換しようかとも思ったのだけど、その程度の改善ではきっと旅行やなん…

起こり、消えた全ての事象の漣

同じ時期にすぐ近くの研究室で博士課程にいた友人が、学位を取った後4年ほどヨーロッパやアメリカへ行って、この春日本に戻ってきた。丸の内で久しぶりに会って話をしていると、彼女は僕が全く思いもしなかったことを教えてくれた。話の発端は、「正しい修…

台湾旅行記1:台北巨蛋(台北ドーム)

もう季節が変わってしまったけれど、4月に1週間ほど台湾へ行っていた。成田から桃園国際空港へ飛んで、バスで台北まで行き、そのあと新幹線を含めた電車で台南、高雄と移動して、高雄国際空港から成田へ戻ってきた。 訪ねてみる前から、台湾というのは、す…

Quartier latin Iterum

fab

「小学生のときから、ずっと生きるのが面倒だと思っていて、夜寝るときにこのまま目が覚めなきゃいいのにと思ってる」 彼女はとても綺麗な女の子だった。一見、人生には思い煩うことなど何もなく、ただ美しい世界で毎日を謳歌しているような女の子だった。彼…

連載小説「グッド・バイ(完結編)」26

(注)この連載についての説明は第一回目の冒頭にあります。 第13回目までは太宰治が書いたものです。 ・困惑(三) 例のぬらつく部屋に、田島は悲壮な顔で上がった。ああどうか金毘羅様、ここにあって下さい。さもなくば僕はもう生きれません。信心なんて…

連載小説「グッド・バイ(完結編)」25

(注)この連載についての説明は第一回目の冒頭にあります。 第13回目までは太宰治が書いたものです。 ・困惑(二) キヌ子は包帯とガーゼを取ってきて、田島に渡した。もちろん、差し出さるるは右手。 「2000円に負けてあげるわ。」 「高すぎる、そん…

連載小説「グッド・バイ(完結編)」24

(注)この連載についての説明は第一回目の冒頭にあります。 第13回目までは太宰治が書いたものです。 ・困惑(一) 「あら、田島さんじゃないの。」 ドアから顔を覗いてキヌ子が言った。田島は右手を抑えてウグググと気味の悪い声を出しながら蹲っていて…